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問屋の仕事場から

2017.08.19
駒撚り糸で織り上げられる夏塩沢

沢山の夏塩沢

夏塩沢は塩沢産地で生産される夏向けの絹織物です。当地では塩沢紬と本塩沢が有名ですが、その優れた技術を夏物着尺に使えないかと生まれたのが夏塩沢です。

その透け感とシャリ感の秘密は経糸、緯糸ともに駒撚り糸を使うことにあります。駒撚り糸とは、撚り糸2本以上を組み合わせて、反対方向に撚り上げた糸のことです。

透け感を出すには細い糸を使い密度を粗く織り上げる必要がありますが、そうすると強度が不足する可能性があります。しかしそれに撚りを加えることで強度の問題をクリアすることができます。また、その糸の形状から肌に触れる面積が減り、シャリ感につながるのです。

冒頭の十字絣の商品、生地を拡大してみてみましょう。

生地の拡大

経、緯ともに駒撚り糸が使われているのがわかります。

分かりやすいようにさらに拡大してみます。

強撚糸の様子

全て駒撚り糸なのではなく、十絣を構成する絣糸に関しては甘く撚った生糸が使われていることがわかります。

夏大島でも同じように駒撚り糸が使われていますが風合いが少し異なり、この夏塩沢はシャリ感を強調しすぎることがありません。

糸を引出し、分解してみました。

3つに分かれた糸

駒撚り糸が3本に分かれました。これは三子糸(みこいと)といい、前出の夏大島に使われている二子糸に比べて糸の断面が丸くなります。それによりシャリ感が抑えられ、肌へのあたりが柔らかくなっていたのです。強すぎるシャリ感が苦手な人にお勧めなサラッとした風合いです。

 

塩沢紬や本塩沢は国の伝統的工芸品に指定されていますが、夏塩沢は未指定で伝統マークの張り付けがありません。明治の頃に完成した織物ですので100年以上の歴史が経過しています。工程の大部分が手仕事で作られており指定要件を十分満たしています。現在は申請を検討中ということで、いつしか伝統シリーズの仲間入りをすることでしょう。

今回はスタンダードな十字絣のみの紹介でしたが、別項では様々なバリエーションのある柄モノも紹介したいと思います。

夏塩沢の生地

スタンダードな十字絣

粗い十字絣

オシャレな色絣も

 

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