結城紬、大島紬に続く日本三大紬にも数えられることのある塩沢紬…
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問屋の仕事場から
- 2019.08.03
- 最上級のお召織物、8マルキの本塩沢
緯糸に強撚糸をつかったお召織物である本塩沢、表面のシボがさらりと伝わる単衣向きの織物です。亀甲絣をメインに様々な絣柄が作られていますが、大島紬並みに絣が敷き詰められた精緻な商品を紹介します。
前項ではスタンダードな十字絣の本塩沢を紹介しましたが、今回は「360かすり」と呼ばれるさらに細かな十字絣です。
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「360かすり」の本塩沢、織元は確かなモノづくりで知られる酒井織物。
素人が急に「360かすり」といわれても、どういった意味か分かりません。100亀甲といわれると反物幅に100個の亀甲絣が並んでいるということですが、こちらは反物幅に絣が360個あるということです。正確には経絣糸が360本並んでいるということで、本塩沢においては最高の精緻さとなります。
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経糸の隣には白い地糸が3本続く。
生地を拡大してみると、経絣糸1本に対して地糸3本であることがわかります。これは大島紬でいうカタスの7マルキの組織、合計で360本の経絣糸ですので経糸の総本数は360×4=1440本となります。
一般的な十字絣や亀甲絣の本塩沢は経絣糸1本、地糸5本の組織ですので、1440÷6=240絣という呼称になるはずです。この360絣は通常の本塩沢の1.5倍(面積ベースではゆうに倍以上)もの絣が敷き詰められているのです。
世の中には複雑な絣模様の100亀甲の本塩沢の商品もありますが、360絣の本塩沢はそれらを上回る製造難易度のものです。
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100亀甲(240かすり)絵絣の商品、経緯が交差する十字絣は一部のみ。
絣糸が多いということは絣の交点が増え、絣合わせの手間が段違いに変わってきます。お召織物は強撚糸を縮ませますから、絣がしっかりと合わさっていなければ生地が縮んだ後に絣がばらけてしまいがちです。
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表面がシボ立つため、絣がぼやけてよい味となる本塩沢。
従来品に比べて倍以上の絣が散りばめられた360かすりの本塩沢、大島紬でいうとカタスの7マルキの組織(絣糸1本:地糸3本)に相当します。
マルキの定義は経絣糸÷80ですので、この本塩沢は4マルキということになり、カタスで換算すると倍の8マルキという呼称になります。8マルキの大島紬といえばなかなかの代物で、撚りの入ったお召織物ともなればこれほど細かな組織はありません。遠目に見れば無地調に見え、カジュアルさがグッと落ち着いたものになります。
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地糸が黒Ver、遠目に見ると無地に見える。
男性でも使うことのできる巾がありますので、お召織物で細かな絣をといった注文にはうってつけの商品です。絣の精緻さとサラリとした風合いを兼ね備えた8マルキの本塩沢、大島や結城とは一味違う素晴らしい逸品に仕上がっています。
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風合いもサラッとして素晴らしいお召織物、シワにもなりにくい。
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通常の本塩沢(下)との比較、絣が詰まっているため色が違ってみえる。