結城紬、大島紬に続く日本三大紬にも数えられることのある塩沢紬…
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問屋の仕事場から
- 2019.01.28
- 杢糸使いの塩沢紬
塩沢紬といえば大島紬にも劣らない精緻な絣模様が特徴の織物ですが、今回は男物にもおすすめな無地タイプの紹介です。
伝統的工芸品における塩沢紬は絣糸を使った織物であることが条件になっています。無地や縞格子の商品は厳密には塩沢紬とはいえないのです。織元(本田織物工場)もそのあたりには気をつかって「塩沢織女」という独自ブランドの証紙が張り付けてあります。
絣糸を使っていないという点だけでブランド訴求力に欠けるのは残念ですが、実際には塩沢地方のれっきとした織元が作ったまぎれもない塩沢の紬そのものなのです。
今回紹介するのは反物巾が一尺五分で作られている男物にも対応する商品です。
塩沢紬は経糸に生糸(平滑な糸)、緯糸に紬糸を使います。遠目にみると無地の黒に見えますが、ところどころに擦れのダメージ加工をしたような白い箇所がランダムに浮き出ています。これは生地表面に変化を持たせた杢無地と呼ばれるタイプの商品です。
分かりやすいように組織を拡大してみてみます。
経糸は100%黒の生糸、緯糸にはベージュ系の紬糸と、グレー系の紬糸が交互に配置されています。
更に経糸、緯糸をほどいて分解してみます。
ベージュの糸は単色ですが、グレーの糸は単色ではありません。一本だけ取り出して確認してみます。
染色しない状態のものと、黒に染めた糸が絡み合っています。これは杢糸と呼ばれる絡み糸の一種です。杢糸を使って織り上げると、生地表面に霜降りをしたようなメランジ効果ともいえる表情が出ます。そしてランダムな節を有する紬糸を使うことで更に味わい深いものに仕上がるのです。
男物にも使える杢無地の塩沢紬、地味ですが粋な違いを楽しみたい方におススメな商品です。塩沢の紬の特徴は精緻な絣柄だけではありません。真綿紬糸を使ったしっかりとした風合いもアピールしてほしいものです。
以上、塩沢紬の本来の良さを再発見させられる商品の紹介でした。