大島紬は柄自体はとても精緻なものですがワンパターンの繰り返し…
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問屋の仕事場から
- 2017.08.18
- 白泥で染める特許製法の大島紬
大島紬の中でも白大島は地糸を染めないことから白をベースとした明るい色調になります。多彩な色使いの絣は爽やかな印象を与えてくれます。しかし泥染め大島紬の風合いには及ばないという欠点もありました。
そこで薩摩焼の原料となる白土に注目、これを白泥に加工して細かな粒子をもみ込むことで豊かな風合いを持たせることに成功しました。
今回は白泥をつかった特許製法の大島紬の紹介です。
掲載写真はすべて恵大島紬織物で作られた白泥染めの製品です。白恵泥(はっけいどろ)という白泥染に関する特許を取得しており、恵大島紬織物製の白大島にはこの特許証が本場大島紬の証紙と一緒に張り付けてあります。
実はこの恵大島紬織物、廣田紬と深いつながりがあり、長きにわたって一緒にものづくりをしてきた織元です。NHKの番組「ファミリーヒストリー」でも紹介されましたが、大活躍中のタレント、恵俊彰さんのご実家でもあります。
創業者の恵関五郎氏は最高の大島紬を作ることで有名で、その作品は昭和天皇にも献上されるほどの腕前を持っていました。関五郎氏は男物の柄に特化し精緻を極めた絣柄はいまや幻となっています。
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俊彰さんの祖父にあたる人物、絣の魔術師と呼ばれるほどの腕前だったそうな。(会社案内パンフレットより)
そのあとを継いだのが恵俊彰さんの父である恵美知雄氏で、男物にこだわることなく、女性たちの憧れとなった大島紬の製造に舵を切りました。会社の規模は大きくなり業界でも有数の機屋として名を馳せることになりました。そして当時、廣田紬で勤務していた女性が美知雄氏のところに嫁ぎ、俊彰さんが生まれたという逸話もあります。
当社の創業者である廣田勘蔵は従来の白大島の絹ツヤに不満を持っていて、艶消しの光沢感の少ないマットホワイトの大島紬が作れないかと恵さんに相談をします。従来の泥染めのような上品な深い色、味わいを持った白い大島紬を作れないかと何度も試作を繰り返しました。
そして7年越しで完成したのが薩摩焼の白土を使った白大島だったのです。
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白泥染のイメージ、百恵泥のパンフレットより。
完成した白恵泥染の大島紬は従来の白大島と比べ、マットホワイトの上品なものです。そして、そのしなやかな風合いはシワに対する回復力が強い素晴らしいものでした。さらに白泥は染料ではなく顔料の性格を持つため、絹糸の弱点である色あせ、黄変にも強いものとなったのです。
本来の目的はマット調の白大島と作り出すことでしたが、副次的効果である泥大島のようなしなやかさも重要なポイントです。
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白泥染めと普通糸の比較、白泥のほうが絹糸本来の光沢が抑えられ、深みのあるオフホワイトになっている。
白大島の欠点を白泥を使う特許製法で克服した恵大島紬織物の大島紬、魅力を少しでも知ってもらいたく記しましたが、残念ながら後継者不足から機を閉じられることになりました。廣田紬と深いゆかりのある恵大島紬織物製の商品、在庫が売れていくと嬉しくも寂しい状況です。
恵大島紬織物製の大島紬は白大島だけではなく、紹介したい素晴らしい商品がたくさんあります。
いずれ項を改めて別途紹介させていただきます。

幻になりつつある白恵泥をつかった白大島。

精緻な12マルキカタスの白泥大島、12マルキを最初に開発したのも恵大島織物である。
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多彩なカラーを生み出した白恵色泥も開発されている。リーフレットより