大島紬の中でも白大島は地糸を染めないことから白をベースとした…
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問屋の仕事場から
- 2017.10.03
- 絵羽模様の本場大島紬
大島紬は柄自体はとても精緻なものですがワンパターンの繰り返しが続き、小紋のような柄になります。訪問着のように前後身頃と袖の柄を組み合せて大柄の模様を作り出すことはできませんでした。
そこで自動織機で織られた縞大島に染や刺繍を施して訪問着とした商品が出てきました。織では実現できない多彩な表現を可能にし、白生地をベースにすることで着物の格を上げています。白生地からの加工なので自由度が高く、一反から作ることができます。
しかしどうしても手織の先染め織物である本場大島紬で絵羽模様を実現したいとの思いがありました。
絵羽の大島紬は手間をかけて絣を作りつなげたもの、繰り返し柄を工夫して袖と身頃とをつなげたもの、いくつかの手法、工夫で絵羽を実現させています。
まずは冒頭の写真の商品から一つづつ紹介していきます。。
半面を全面絣で模様を構成、半面を無地の泥染めにしています。様々な草花の中に京都の社寺がちりばめられているという贅沢な柄です。あえてを半分だけにすることで柄を強調し、コストダウンとデザイン性を両立に成功しています。
柄を拡大してみます。
仮絵羽仕立てなのできっちりとは柄があっていませんが、衽、前身頃、後ろ身頃と柄が続いて一枚の柄になっていることがわかります。同じ柄は一つとしてなく、繰り返し柄ではありません。非常に手間のかかった商品であることがわかります。
次の商品をみていきます。
こちらは秋深まる京都の山に清水寺が描かれた作品で、先ほどの柄に比べてシンプルに見える白大島です。しかし白場に見える個所もすべて十字絣で構成されており手間は相当なものです。
引き続き、次を見ていきます。
こちらの商品は一面に広がる森林を表したものですが、よくみると同じ柄が使われています。うまくつなぎ目を合わせることで絵羽模様になるようにデザインされてるのです。そして柄が一方付けになっています。
四角で囲った部分が基本となる柄で、上左右と同じ柄が繰り返されています。同じ柄の繰り返しに見えないように一部を後染加工することで変化をもたせているのもデザインの妙です。そして連続する柄が上下反転しないように袋締めで絣を作り一方付になっています。さらに肩の部分で柄が折り返され、天地が逆になるところをうまく調整して柄を反転させています。付下げタイプの大縞紬ということができるでしょう。
そして霞み模様が効いた大島紬がこちら。
友禅の蒔糊の技法を用いたような非常に上品な柄です。裾から肩にかけて薄くなるグラデーションを横絣で表現しています。染でこれを実現させるのは不可能で、世界一細かいといわれる大島紬の絣糸ならではの商品です。
こちらの商品、わざわざこのような細かい絣を作って織り上げたとなると大変な手間がかかります。絣糸自体はほかの大島紬を作る際に余計に作っておいた糸を組み合わせたものなのです。大変なアイデア商品で、量産が困難な逸品です。
以上、絵羽模様の大島紬の紹介でした。
白生地の縞大島に染加工を施せば楽に模様を出すことができます。しかし、そこをあえて絣で絵羽模様を作ることにこだわった特別な大島紬、精緻な絣で柄を表現する大島紬の魅力を最大限に発揮できる形といえるでしょう。