結城紬、大島紬に続く日本三大紬にも数えられることのある塩沢紬…
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問屋の仕事場から
- 2019.02.02
- バリエーション豊かなオシャレ夏塩沢
オシャレ夏着物の夏塩沢、前項ではスタンダードな十字絣の商品だけを紹介しました。一大織物産地である塩沢地方においては、織元の数も多く、多彩なバリエーションがあります。
さっそく商品を見ながら解説していきます。冒頭の商品は白地に二色の経緯絣が入ったデザインです。
拡大してみると、緯糸に絣糸が二本連続していることがわかります。緯絣糸の絣でない箇所が地糸の色と異なり、それが横段となってよいアクセントになっています。
糸を分解してみると、強いシャリ感をもたらす三子撚(みこより)の糸であることがわかります。織り目を粗くすることで風通しの良い生地になりますが、普通の糸だと強度が犠牲になってしまいます。強い撚りをかけた糸を使うことで、耐久性の問題も解決しています。
次は定番の亀甲絣、
こちらは100亀甲ですので、反物巾(1尺:約38センチ)に100個の亀甲が並びます。夏塩沢は織目が粗く、経糸の糸数自体が少なくなります。
拡大してみると、経絣糸と地糸の比率が1:3であることが分かります。実は透け感のない他の紬地ですと100亀甲の経絣糸と地糸の比率は1:5(中盤の結城紬100亀甲の拡大画像参照)になります。
次の商品を見ていきます。
こちらは藍地に大小の井桁、くっきりと浮かぶ絣模様は明けの星空を表しているかのようです。
濃い地にしっかりと絣が浮き出ている柄ですが、それもそのはず実は絣が大島紬でいうところの一元絣で構成されているのです。
連続する経絣糸2本と緯絣糸2本、がっちりと組み合わさり、絣を構成しています。結城紬では絣がずれるので忌避される諸絣という手法で、大島紬ですらほとんどが絣合わせが楽なカタス(経絣一本に緯絣二本:キの字)で作られているのに、この商品の絣に対しての力の入れようが伝わってきます。
ウンチクは端折って更に別の柄を紹介していきます。
様々な夏塩沢を紹介しましたが、モダンかつ飽きない柄が多いと思います。他の夏織物と比べてもオシャレさでは一つ抜き出ていると言ってよいでしょう。精緻さで競うのであれば夏大島もありますが、コスト競争力においては夏塩沢にはかないません。夏のおしゃれ着の主役として幅広く活躍してくれるでしょう。