琉球絣は様々な素材、糸質、織技法を駆使して独自の発展を遂げて…
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問屋の仕事場から
- 2017.08.10
- 駒撚糸を使う涼やかな夏大島
夏大島と大島紬、お互いに大島と名前こそつきますがその質感は全く別物といってよいものです。
生糸を高密度に織り込み、しっとりとした質感をもつ大島紬に対して、夏大島は駒糸を低密度で織ることで独自のシャリ感を持たせています。
お互いの組織を拡大して見てゆきましょう。
比較がしやすいように同じ色味の大島紬と夏大島を用意しました。
まずは大島紬、奄美産地の草木染の十字絣の品です。
拡大してみます。
ほとんど隙間なく生糸が敷き詰められており、糸にほんの甘く撚りがかかっているのがわかります。
次に夏大島、無地感覚ですがベージュ色の糸を入れることで、ほのかに縞を演出した商品です。
同じように拡大してみます。
経糸、緯糸ともにお互いの隙間が空いており、低密度であることが見てとれます。これだけ間隔があいているので透け感を演出することができます。よく見ると一本の糸を構成するのに二本の糸が撚り合わさっています。
さらに拡大してみましょう。
これは駒撚糸と呼ばれ、強い撚りのかかった二本以上の糸を組み合わせて反対方向に撚りをかけたものです。
強い撚りをかけた糸をさらに撚り込むことで、肌への直接触れる範囲を減らすことができます。べたべたと生地が肌にまとわりつかないシャリ感はこの駒撚糸に秘密がありました。撚り具合や組合せを工夫することでシャリ感の強弱が変わってきます。撚りが強すぎる(シャリ感が強い)と織り進めるのが困難になることもあり、このバランスの調整が機屋の腕の見せ所、紹介の東郷織物の夏大島はシャリ感で他の夏大島を一歩リードしています。
夏大島に限らず絹の夏物着尺は強く撚りのかかった糸を使い、シャリ感を演出した織物が多いです。お求めの際は、それがどのような種類の糸を使っているかを確認してみてはいかがでしょうか。