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問屋の仕事場から

2019.03.26
ろうけつ染めの夏大島

最高級の夏のオシャレ絹織物である夏大島、モノトーンが主になるシンプルな地色がほとんどですが、後染めを施すことで鮮やさを兼ね備えた別物に仕上がります。

自動織機で織りあげた縞大島の白生地に友禅などで柄付することはよくおこなわれていますが、今回紹介するのは蚊絣のタイプにろうけつ染めを施したものです。大変な手間をかけて作られる蚊絣の夏大島、その生地コストは縞大島のゆうに10倍以上はします。

先染め織物の夏大島+ろうけつ染め は表裏同柄になる。

ろうけつ染めとは生地に溶かした蝋を塗り防染、色をかけて染色したものです。蝋で防染された箇所は乾燥でひび割れをおこし、不規則な亀裂が入ります。型置きによる染や友禅とは異なる味わい技法で、表裏一体に染め上げることができます。仕立て替えて裏を使うことができる先染め織物と相性がよく、大切に長く使うことができるのもメリットの一つです。

生地となる夏大島は今は無き恵大島紬製。京都でろうけつ染めの後加工を行う。

二本の糸を一本により合わせた双糸、組織としてはカタスの5マルキ。

生地を拡大してみると、強い撚りをかけた糸であることがわかります。糸と糸との隙間が空いているので程よい透け感が生まれます。夏大島とは呼称していますが、むしろ単衣の季節から着てもらいたいものです。

風通しがよく透け感のある生地。

盛夏のオシャレ着には麻を着てくださいと言いたくなりますが、絹織物は麻には決してマネのできないしなやかさ、優雅さを持ちます。

麻織物にはないしなやかさを持ち、しわに対する回復力も強い。

モノトーンな夏大島に彩を与えてくれるろうけつ染めの夏大島、その珍しさも相まって注目の的となることでしょう。

 

今回はろうけつ染の夏大島を紹介しましたが、先染め織物に後加工することは当然他の織物でも可能です。廣田紬では過去に結城紬や大島紬に絞りなどの後加工もよくおこなっていました。織物の生産数自体が少なくなった現在では、そのような贅沢な加工がなかなかできなくなっています。今後も機会ありましたら廣田紬ならではの珍しい後染め加工品を紹介していきます。

 

麻型に青系の色の加工をした別テイストの夏大島。

 

 

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