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問屋の仕事場から

2020.11.27
愛すべき紬のエントリーモデル、真面目な西陣無地紬

上質な紬が欲しいが結城紬ほどの高価なものは極端すぎる、しかしペラペラ安物の紬は困る、紬のエントリー向けとしておすすめしたい上質な紬の紹介です。

紬とは?の項で紬の定義を解説していますが、世の中には様々な紬を呼称する商品があります。その大半が本来の紬を模して節感を演出した紬調織物です。中には綿やポリエステルを加工して作られた絹織物ですらない代物も存在しています。

節感のある化繊紬、メンテナンスも経済的。

流通する数量ベースではまともな紬の方が稀で、節感さえあればそれで問題ないという世の中のニーズが現れています。仕立て上りで数千円で購入できるので、とりあえず紬調着物が欲しいという人にはうってつけでしょう。

それに飽き足らず、上質な本物の紬が欲しいというかたはこちら。

京都西陣で織られる紬で経糸、緯糸共に紬糸が使われています。紬糸を経緯共に100%使用する諸紬ではなく、数本に1本織り込まれています。コストを抑えつつ、十分な質感を出すことに成功しています。

元々は男物の紬として作られていたものですが、廣田紬では洗えるマスク素材として販売するために生地を縮めるだけ縮めています。高身長の方でないかぎり十分使える幅を維持していますので、女性はもちろん大抵の男性もお使いいただくことが可能です。

緯糸の染色には草木から抽出した植物染料(ヘマチン等)が使われており、草木染紬が謳われています。

ちょうど経緯の紬糸が交差する箇所を組織を拡大して撮影してみました。経糸(藍系)、緯糸(黒系)の色が異なるのがわかります。ゴケ無地(シャンブレー)と呼ばれる配置で、生地表面が玉虫色に見える効果があります。

いたってどこにでもありそうな普通の無地紬ですが、こういった商品が昨今姿を消してしまいつつあることも事実です。

この商品は「真面目」な紬の中のエントリークラスに位置しています。それなりに数を作ることでコストが抑えられていますが、昔のようなロットで商品を捌くことが困難になり、少量生産では採算を取るのは困難な状況になっていまいました。

藍系統3種類比較。無地のエントリークラスの商品にはカラバリが必要。

通常は共通の経糸を張り、緯糸の色や種類を変えることでカラーバリエーションを出しますが、仮に5種類を作る場合は各20反、合計100反といった製造ロットが必要になってきます。現在の状況下では大量な在庫を抱えることは織元にとっては大変なリスクで、コストを抑えた商品を作ることができなくなってしまったのです。

その質感の良さが認められて洋装分野での使用も。

今後も予測される需要減を鑑みると、コストと品質をバランスよく両立させた商品というのはますます貴重な存在となってしまいます。求めやすい価格で紬の良さをアピールできる商品が少しでも増えれば、さらにワンランク上、そして奥深い染織の世界へ踏み入れていただくエントリー(入り口)となることでしょう。

今回の無地紬と紬調織物(奥)との比較、節の出方が異なる。

真面目な西陣無地紬、一度手にとっていただければその質感のよさ、紬調織物との差が伝わるはずです。マスク生地としても販売(ハギレのため大変お得な価格です)しておりますので、是非試してみてください。

 

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