紙布とは和紙を千鳥状の短冊にし、撚りをかけ緯糸として織った布…
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問屋の仕事場から
- 2017.08.08
- 和紙100%でできた男物着尺(諸紙布)
シンプルな柄だからこそ素材や品質にこだわりをもちたい男物。
今回は紙糸に柿渋染を施し、経糸、緯糸ともに使用、100%和紙でできた珍しい着尺(諸紙布)を紹介します。
世の中には紙衣(かみこ)と呼ばれる物があります。これは和紙に防水加工を施して衣服に仕立てたもので、和紙の生産が全国に広がった江戸時代にはその丈夫さから庶民が着るものとして普及、現在でも修行僧が纏っています。和紙をそのまま纏う紙衣は風通しが全くない、洗濯が困難という欠点がありました。
そこで和紙を細かく裁断、柿渋染で補強して布として織り上げたのが紙布です。
紙布といえば帯に使われることが多く、着尺地としての扱いは滅多にありません。材料の確保が困難で5,6年に一度しか作られない物だからです。諸紙布の帯が非常に軽量だったのに対し、こちらはしっかりとした重みがあります。着尺としての十分な強度を確保するために強い撚りをかけており、糸自体の量が多くなるためです。この重厚感が独特の風合いも相まって、なにか只者ではない高級感を演出しています。
これがすべて紙でできているとは一見して誰もわからないでしょう。始めのうちは少し独特の硬さがありますが使い込むほどに馴染んできて、他のどんな織物にも真似のできない風合いを醸し出してくれます。透け感がありますのでどちらかというと夏物としての使用をおすすめします。ハードな風合いを活かすのであれば、羽織などにしていただくのもお勧めです。
唯一無二の諸紙布の着尺、その着姿を想像するだけでわくわくしてしまいます。