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問屋の仕事場から

2020.03.20
織物の組織を拡大(Zoom)する 〜大島紬編〜

大島紬の醍醐味といえば精緻な絣柄、世界で最も細かい絣織物といわれる工芸の美にズームして迫ります。

前回取り上げた結城紬、組織を拡大することで手仕事の美を再発見することができました。今回取り上げるのは9マルキ(カタス)の泥大島、縦に大きく伸びる笹を表現した柄です。絣作りをする際に絣足の出方をうまくコントロール、赤茶けた独特の味を意識して作られています。

こちらは廣田紬独自のアイデア特許とも言える設計で、人の身長をゆうに越える柄のピッチを実現、技術の粋を集めた傑作と言えます。今後は作ることは困難で、売れてしまえばもう二度とお目にかかることはできないでしょう。

要尺として不要な部分を見本布を保管することも可能ですが、このような長いピッチの柄は切り取って残すわけにはいかず、デジタルアーカイブで残すしかありません。

使用するのは美術館の所蔵作品のアーカイブなどでも使われている機材、情報を余すことなく記録することができます。被写体からの距離を数回変えて撮影、世界で最高の精緻さを誇る大島紬を組織の1本1本の糸まで解像することができました。

 

ベースとなるのがこちらの商品の全体画像。衣桁に掛けた状態で、一番上から下まで竹の枝が斜めに伸びています。

①商品の全体画像

次はこれ以上ピントが合わないところまで被写体との距離を近づけて撮影、

②最短撮影距離で撮影

さらに被写体との距離を縮める為にエクステンションチューブをかませて接写、

③クローズアップ撮影

ここまでくるとこのページにUPした縮小画像(800×600ピクセル)でも、カタスのT字の絣が敷き詰められていることがわかります。

③を等倍でトリミングした画像がこちら、

等倍で見ると、絣糸と地糸を一本一本明確に分離して見ることができます。今回の商品の場合、絣糸:地糸=1:2の割合、カタスの9マルキということになります。

 

神は細部に宿る

さらにルーペで拡大することで糸一本を構成する繊維一本一本が見えてきます。赤茶けた絣足がわかりますが、エラーではなく濃淡を意図的に作り出すことで、竹の枝の部分を浮き上がらせているのです。濃淡をコントロールして絣模様に立体感を持たせる妙、この商品の真髄を垣間見ることができます。

意図的に絣足が伸びる。濃淡を出すことで柄に奥行きが生まれる。

まさに「神は細部に宿る」泥染の美しさはディティールに迫ることで見えてきます。

 

大島紬は現状の後継者難が続けば、作り続けることができません。先人たちが技術の粋を結集して作った人類の宝とも言える奇跡の布、その凄さを知ってもらうことで少しでも産地の活性化につながれば幸いです。

 

①〜③の写真の元データは7,216ピクセル×5,412ピクセルという大きなサイズで撮影されており、次項からダウンロード頂けます。

大島紬の最大の特徴である精緻な絣とはどのようなものか、お楽しみください。