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問屋の仕事場から

2020.01.12
ジャパンブルーの大島紬 ~希少な泥藍染め~

ジャパンブルーとも言われ、日本国のシンボルカラーともいえるのが藍色です。古くからこの国で伝統的に使われてきた藍染の色ですが、大島紬においても積極的に使われてきました。

泥染の大島紬はトロッとした素晴らしい風合いですが、「黒」という暗すぎる色になってしまいます。藍色の大島紬は、黒(茶)一辺倒の大島紬のカラーバリエーションを広げるべく1930年代に登場しました。戦後に明るいパステルカラーの色大島が登場する先駆けとなる取り組みです。

藍染めの大島紬、藍だけではなく黄、橙、赤も加えられている。

藍染めの大島紬と一口に言ってもその内容は少々複雑できちんと整理しておく必要があります。

①正藍染(植物藍染)した糸を防染、泥染した糸で織り上げたもの

②藍染(化学染)した糸を防染、泥染した糸で織り上げたもの

③藍染(化学染)した糸を防染、黒色染料で染めた糸で織り上げたもの

④藍染(化学染)した糸で織り上げたもの

⑤正藍染(植物藍染)した糸で織り上げたもの

ざっと5種類に分類しましたが、その大島紬が藍色をしているからといってすべてが泥染、正藍染めとは言えないのです。

例えばこちらの紫にちかい藍色の大島紬、分類としては④になります。

全てが化学染料で染められたもので、泥染がされていません。いわゆる色大島です。泥染特有の黒い箇所がないのですぐにわかると思いますが、黒い糸が走るややこしいケースもあります。

 

一例を比較して見てみましょう。

泥染との比較、化学染料で染められた黒には色の深みがない。

定番の男物の藍亀甲ですが、左が②(泥染)、右が③(黒色化学染料)の商品です。藍色の色味が異なるのは染料の種類の違いですが、地色の黒の部分に注目してみてください。左(泥染)のほうが濃く、右(化学染)の黒のほうが薄いことが分かります。黒色成分がランダムかつ物理的に固着している泥染と、化学的に均一に染め上げる化学染料とは光の吸収率が異なるためです。

化学染は色に深みがなく、しなやかさにも欠けるとなっては、少しくらい高くても泥染の大島紬を選択すべきでしょう。

 

泥染、泥藍染め大島紬の見分け方

風合いに劣る化学染の藍色大島、見慣れている人であれば一目でわかりますが、どのようにして素人が識別したらよいのでしょうか。

こちらは泥染の藍の麻型、大島紬は産地組合の検査証紙(地球印)がついていますが、泥染の場合は以下の泥染であることを示す証紙が付与されています。

分類としては 「②藍染(化学染)した糸を防染、泥染した糸で織り上げたもの」 となります。

 

ポイントは「純」泥染と記載していることで、非泥染の絣糸を交織していたりするとアウトなわけです。こちらの証紙が付与されている商品はすべての糸において、少なくとも一回は奄美の泥をくぐっているという保証でもあるのです。

ところで、この商品の藍染には化学藍がつかわれており、正藍(琉球藍や蓼藍といった植物藍)は使われていません。

「①正藍染した糸を防染、泥染した糸で織り上げたもの」 このような商品はどう見極めたらよいのでしょうか。

こちらが正藍が使われている商品、藍の濃さがぐっと引き締まってみえます。地糸、反物の耳端も藍色に染まっていて、こだわりが見て取れます。正藍染めされている大島紬には草木染であることを示す以下の証紙が付与されます。

 

正確には「車輪梅(テーチ木)以外の純植物染料で染められ、泥染されたもの」ということですが、藍色の場合は植物藍が使われているということと同義と捉えてよいでしょう。正藍染めにこだわる方はこちらの証紙のついた大島紬をお求めになられることが確実です。

①正藍染した糸を防染、泥染した糸で織り上げたもの ⇒ 草木泥染の証紙

②藍染(化学染)した糸を防染、泥染した糸で織り上げたもの ⇒ 純泥染の証紙

泥藍と呼ばれる優れた大島紬は以上の証紙が付与されていなければならないのです。

※平成19年までは正藍大島紬の印鑑が証紙に押印されていました

しなやかにドレープする泥染の大島紬の生地、化学染料染の生地とは別物である。

大変魅力的な泥藍の大島紬ですが奄美産地において全体の数パーセントしか作られていない希少なもので、鹿児島産地においては統計上0%となってしまいました。

泥染ができない(泥染する場合は奄美に委託します)鹿児島産地においては、泥染に固執することない正藍染100%の大島紬(分類⑤)も作られています。さらに大島紬の綿糸バージョンともいえる薩摩絣(綿さつま)にも正藍が使われています。

正藍染め綿薩摩、着用しているうちに色が変化していく。

鹿児島産地は様々な植物染料に活路を見出しすぎた結果、ウコン染や屋久杉染などの珍品ともいえる顔ぶれが目立つようになってきています。着用することで健康増進効果を謳ったトンデモ商品も中にはありますので注意が必要です。もっとも藍についても着用による健康増進効果はありません。

以上、JAPAN BLUE として親しまれてきた藍色、大島紬にも生かされています。希少なものになりつつありますが一度手に取ってみてその良さを感じてみてください。

 

 

 

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