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問屋の仕事場から

2020.01.06
風通崩しの白鷹の手綾織

見る角度によって違う表情を見せる白鷹の手綾織、特別に誂えた風通クズシの逸品が織りあがってきました。

山形県置賜郡においては様々な綾織の商品が作られていて、黄八丈のような市松クズシの綾織も作られています。

置賜製の綾織。どちらが先かは定かではないが、山下めゆ工房の市松クズシ綾織に酷似。

本場黄八丈は決められた自然染料を使い、限定された色で商品を作りこまなければいけません。絣糸を使うことも許されず、色や柄の制約を受けるかわりに高度な織技法が発達しました。綾織と呼ばれる糸を浮かせて織られる組織は光を方々に反射して美しく煌めきます。

黄八丈で使われる綾織は10種類ほどありますが、その中でも高度なのが「風通くずし」と呼ばれる柄です。

本場黄八丈の風通くずし、特殊な丸紋が地紋となって続く

黄、茶(鳶色)、黒の3色の色が使われ、美しく複雑な織紋様が生地に浮かび出ます。多数の綜絖を駆使してかかる手間は通常の平織の比ではなく、当然その手間は商品の価格にも反映されます。ただでさえ高級な黄八丈、商品は素晴らしいものですが、ますます手の届かない物になってしまいます。

黄八丈の証紙には綾織の種別が記載されている。

 

この風通崩し柄、置賜で再現することができないかと試織したのが今回紹介の商品です。

白鷹の手綾織は白鷹町にある織元、(株)白たか織さんによって作られています。板締絣の伝統を守られている稀有な工房では、お召だけではなく美しい綾織の着尺も作られています。

黄八丈と同じく高機で丁寧に織られたその質感は只者ではありません。着物通をぐっとうならせる迫力を備えています。

使われている色糸は黄八丈と同じく3種類(青、グレー、茶)が組み合わされ、それぞれの植物染料は藍、梅、矢車が使われています。遠目に見るとシルバーグレーの無地感覚の着物ですが、間近でみると複雑な組織が目につきます。

組織を拡大してみます。

全体がシルバーグレイに見えるのは梅で染めた糸の比率が高いから、拡大して見ると色糸が3種類使われているのがよくわかります。

綾織は表裏の地紋が異なり、見る角度によっても違う表情を見せてくれます。

この商品が織り上げるのに普段とは異なる調子で何万回と踏み木を操作しなければならず、織り子さん泣かせの試みだったようです。納品された箱の中には織るのには大変な苦労があった旨の一筆が添えられていました。

綜絖を駆使し、緯糸を浮かせて綾にしていく。

黄八丈では作ることのできない色合いを実現した白鷹の手綾織、限られた熟達の織り手でしかなし得ない最高の質感をお確かめ下さい。

 

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