琉球絣は様々な素材、糸質、織技法を駆使して独自の発展を遂げて…
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問屋の仕事場から
- 2018.02.04
- 単衣に最適な紅花浮織
モダンなデザイン感覚やコスト競争力で他産地をリードする山形産地の織物、今回は単衣に最適なアイデア商品の紹介です。
単衣や夏向けやの織物は生地の肌への接触面積を減らすための様々な工夫が見られます。自然布のように繊維自体が強いシャリ感を持つもの、細い強撚糸や壁糸を使うことで糸自体の接地面積を減らすもの、縮加工などで表面にシワを作るもの、それぞれの良さがあり風合いに特徴があります。
今回紹介の商品、緯糸には未精練の生糸を使います。精練をしない生糸は独自のシャリ感と硬質なハリを持つ糸となり、そのままでは着尺には適しません。しかしこれを極細にし、緯糸として織り込むことで絹らしいサラッとした風合いを得ることができます。経糸には紅花を使って染められた緯糸より太い生糸が使われています。
強撚糸を使ったハリ感のある織物はオレやシワが発生しやすいのですが、この商品はかなりのドレープ性を有しています。生地に触れてみるとざらっとした肌触りが伝わってきます。琉球のカベ上布のような強烈なざらつきではなく、どこか優しさをのこした風合いです。
表面のシャリ感は緯糸由来だけではありません。表面をよく見てみると一定の間隔でシボが点在しています。
組織を拡大してみると、その箇所が浮織となっているのがわかります。浮いている箇所がシボをつくり、肌への接触面積を低減していたのです。そしてこの浮織はほとんど目立ちません。シワになりにくい無地の着尺は少々かしこまった場でも活躍してくれるでしょう。
緯糸が浮いてるちょうど裏面は経糸が浮いているということです。裏表で風合いが微妙に異なり、表地はサラッとしていますが、裏地はザラッとしています。見た目はまず気づきませんが、仕立て時には注意が必要です。
緯糸に未精練の絹を使いシャリ感を演出、さらに浮織とすることで肌への接触面積を減らす。素晴らしいアイデアの商品、単衣の時期に大活躍してくれることでしょう。