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問屋の仕事場から

2019.05.23
グラデーションが魅力な藍染の近江ちぢみ

近江ちぢみといえば肌にまとわりつかない縮加工で人気の織物です。爽やかな麻のシャリ感は夏のカジュアル着物として最適で、リーズナブルな価格も魅力の一つです。縞、格子を中心とした様々なデザインバリエーションがありますが、今回は藍染を使ったこだわりの商品の紹介です。

近江ちぢみがリーズナブルな理由は最終工程の縮加工を除き、かなりの部分が効率化、自動化されて作られているからです。機械紡績糸を化学染料で染め、自動織機で高速で織り上げられます。それなりのロット数が作られるのでコストダウンになっているわけですが、工芸製品としての味や希少性という観点からすると少々物足りなく感じるかもしれません。

小千谷ちぢみにも様々なランクがあるように、近江ちぢみにも手間のかかった希少な商品が存在しています。

冒頭の写真の商品は藍染の縞着尺、経糸の濃さの違いでグラデーションを表した商品です。

藍は藍四十八色とも呼ばれ、浸染した時間、回数、藍を建ててからの時間など様々な条件で色が変わってきます。藍とうまく付き合うことができないと、意図した染め上りに近づけることはできません。藍染め魅力はその雑味にありますが、ここでもこだわりの藍染が行われています。

藍甕、静かに醗酵が進む。グラデーションの数は藍甕の数に依存する。 @手織りの里 金剛苑

藍染めのアルカリ剤には灰汁が使われますが、ここでは琵琶湖で採れる淡水真珠貝を砕き、信楽焼の窯元で焼き上げて貝から灰が作られています。琵琶湖の恵みから得られた灰を微生物が食べ、それらが生み出す雑味が青に深みを与え、人の五感をくすぐる魅力的なものになります。

経糸の色配分を決定する縞割もデザイン力が問われます。冒頭の商品は均等割りのグラデーションデザインですが、他にも魅力的なデザイン展開がされています。

こだわりのデザインは近江上布の伝統工芸士によるもの。

藍染めにこだわった近江縮、織りの工程も高速で織り上げる自動織機ではありません。手織りの高機と同じ構造の力織機(打ち込みに動力を使用)で丁寧に織り進められます。故に製造ロットも少なく希少な存在の近江ちぢみです。最後は職人によるシボ出し、強撚糸を手もみすることで撚りがランダムに戻り独特のシボが生まれます。

こだわりの希少品だからでしょうか、職人のシボ出し作業にも力が入ります。経縞とタテシボの組み合わせで布にさらなる表情と深みを与えてくれます。

藍染めは化学染料では決してなし得ない美しさを布に与えてくれます。定量化された美しさではなく、どこか雑味を含み可愛気のある美しさがうれしいこともあります。手間暇をかけた藍染の近江ちぢみ、量産されたものでは面白くない、こだわりの逸品が欲しいという方にお勧めしたい商品です。

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