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問屋の仕事場から

2018.05.06
波平スタイルから始める男のきもの 

着物をきた波平さん

国民的テレビアニメであるサザエさん、波平さんは出勤時はスーツで出勤しますが、帰宅すればくつろぎモードの着物に着替えます。いまだに黒電話を使うという昭和な時代感覚を残していますが、そんな波平さんのスタイルに好感を持たれる方は多いと思います。

男の着物というとまずは式服としての紋付羽織袴や、和のお稽古事などの正絹着物をイメージされるかもしれません。どうも催し事等で気を引き締めて着るものであると先入観があるように思われます。波平さんのように部屋着として着物を着る人は少数派です。

羽織はかまを着た人

紋付羽織袴姿、いくら慣れた人でも着るのに10分は要するであろう。

それは部屋着は汚れたり擦り切れたりしてもよい安価なものであるという考えが第一にあるからでしょう。メンテナンスコストを考えると正絹の着物を普段着にするのは好ましくありません。波平さんの部屋着はおそらく正絹の着物ではなく、ウールや綿の気負わず着ることのできる着物のはずです。自宅で洗濯のできる(フネさんが完璧にやってくれるのでしょうが)メンテナンス性に優れた素材を選ぶことが大切です。

さらに楽であることが求められます。「着るのが楽」という点では洋服に分があります。慣れれば大したことないのですが、ちょっとしたひと手間を厭うのが現代を生きる人々です。しかし「着ていて楽」という点においては着物(特に夏物)にも健闘の余地があるのではないでしょうか。

 

例えば病院での患者さんの服、上下セパレートの物もありますが浴衣タイプの患者衣が人気です。体の不自由な人が少しでも楽に過ごせるように考えられた服が浴衣でもあるのです。そして温泉旅館などで着る浴衣を想像してみてください。肌着の上からガウンのようにラフに纏い、温泉街を散策するものです。袖口や襟口から風が通るのため、浴衣はうだるように熱い日本の夏に最適なのです。

 

日本の夏に最適な近江ちぢみ

そこで最適な生地が麻を使った近江ちぢみです。

男性向けの近江縮の無地

近江ちぢみ男物着尺。もし裄丈が不足しても夏着物故、少しくらいは目をつむることができます。

昨今のうだるような暑さの日本の夏、すぐに汗だくになってしまいます。しかし麻は汗をいち早く吸収してくれ、熱伝導率が高く、肌から熱を奪い発散してくれます。そして近江ちぢみは独自のちぢみ加工のシボのおかげで肌にまとわりつきにくい素材です。何百年もの間の先人の知恵を引き継ぐ近江ちぢみは、現代の化学繊維にも引けをとらない優れものなのです。

更にメンテナンス性に大変優れています。麻は自宅で簡単に洗濯できますし、一晩干しておけば翌朝には乾いているのがうれしいところ。しかも洗えば洗うほど繊維が柔らかくなり、風合いが増します。さらに独自の縦シボが特徴ですので面倒なアイロンがけも不要です。

 

生地の拡大、表面のシワが肌への接触面積を減らしている。

近江ちぢみは洋装のシャツにも使われており、だらしなくない生地の高級感があります。上質の麻を使った織物は正装として用いられていたほどです。部屋着とは思わせない生地感がありますので「お出かけ」するにあたってもそのまま外出することができます。浴衣と夏着物の違いは襦袢の有無ですので、半襦袢を着用し襟元をしっかりするだけでちゃんとした夏着物にもなります。

生地拡大

「着ていて楽」の観点でいうとお出かけ時の周囲の目線でもメリットがあります。現代では不思議と着物を着ているだけで格が上り、周囲にきちんとした対応をしてもらえることがあります。凡人であるはずの波平やのび太くんのパパが着物を着た途端、威厳があるように見えるのは着物のなせる奇跡です。浴衣の延長である夏着物を着ているだけでなにか高尚な仕事をしている、通な趣味人であると思わせるのはなんともお得ではありませんか。

 

部屋着としての着物は周りの目を気にせず、自由なスタイルで着ることができます。それこそ下着と腰ひもだけ、戦国時代の野武士のようにザックリと着ることもできるのです。そして普段から着物に親しんでいればイザという時の所作に違いが出ます。ここぞという場面でしっかりと着こなせるメリットがあるのです。

無地では面白みがないという方には崩し織のタイプも。

帰宅後、締め付けるスタイルの洋服を脱ぎ捨てたとき、精神的にも肉体的にも本当にくつろぐことのできる自分が見つかるかもしれません。自宅では着物で過ごす波平スタイル、何しろ着物と腰ひも一本あればできるのです。かしこまらず着物入門するのに大変おススメなやり方ですので、一度近江ちぢみでラフに試してみてください。

 

 

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