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- ブログ -
問屋の仕事場から

2018.05.10
大島紬の生産内訳から見えてくるもの

積まれた大島紬の反物

本場奄美大島紬協同組合から2017年(平成29年度)の大島紬の生産数が発表されました。その内訳も発表されており、内容を分析することで現在のトレンドを知ることができます。また鹿児島産地(本場大島紬織物協同組合)からも生産数が発表されており、両者の比較からは産地の方向性が見えてきます。

本ブログの「本場大島紬の今後についての考察」では奄美大島産の過去の生産数の推移から将来予想してみましたが昨年度(2017年1月~12月)は4402反と前年比7%減となりました。今後も厳しい状況は続くと予見されますが、生産(正確には組合で検査された数量)された内容の内訳を見てみます。

大島紬の生産内訳表

大島紬(奄美産地)の2017年(1月~12月)の生産数内訳

注目する点は泥染(草木泥、泥藍含む)と化学染料で染められた商品の割合がほぼ拮抗していることでしょう。大島紬というと泥染めが有名ですが、半分は化学染料によって染められています。市場ニーズから白大島や鮮やかな色大島を求められていることがわかります。

また経緯別の分類でヨコ絣とありますが、実はこちらには無地や縞格子の商品も含まれています。分類では経緯絣の商品がほとんどで、経緯絣で柄をだして付加価値を求める奄美産地の方向性をうかがい知ることができます。

 

次に鹿児島産地の生産数、その内訳を見てみます。

鹿児島産大島紬の生産内訳表

大島紬(鹿児島産地)の2017年(1月~12月)の生産数内訳

内訳に関しては統計の取り方が違うため完全な比較はできませんが、鹿児島産地の生産数は20,376反、奄美産地の実に5倍近い規模があります。大島紬はその名前の通り奄美大島の特産品でしたが、その技術は明治の初めに鹿児島に渡り、今では圧倒的な生産数を誇るようになりました。

圧倒的な生産数の鹿児島産地ですが、その製織別の内訳をみてみますと「縞無地」が15,058反と大半を占めます。この縞無地は白生地として使われたり、縞格子のシンプルなデザイン柄の商品です。縞大島と呼ばれるもので、主に自動織機で織られることから安価かつ大量に作ることができるのです。世の中に流通する「大島」というとこの縞大島が大半を占めることになります。

縞大島に張られたオレンジ色の証紙、稀に手織りの商品も存在する。

残りの5,318反が本場大島紬となるのですが、その中でも経緯絣の商品は3,309反となり、この数字は奄美産地の4,012反を下回ります。大島紬の特徴ともいえる泥染めの商品に至っては644反と奄美の3分の1ほどです。鹿児島では泥染めができないので一旦糸を奄美に送って染めなければいけません。コストダウン思考の強い縞大島の影響もあり、化学染料での染めが発達しました。昔多かった泥藍や藍染の商品も区分はありますが、今や統計上ゼロ%となってしまいました。

藍の大島紬

鹿児島産地の経緯絣の商品、泥藍で染めたものは統計上0%までに減ってしまった。

なお鹿児島産地おける総生産反数は前年度比の11.4%減と奄美産地を上回る減少具合です。今後も厳しい状況が続くとは思いますが、スケールメリットがあってこその大島紬ですのでなんとか持ちこたえてもらいたいものです。

 

以上、奄美と鹿児島の両産地の生産数の内訳をみてきました。

このデータは毎年発表されますので機会を見て引き続き本ブログでとりあげていきたいと思います。

 

 

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