抜けるような透け感が美しい明石縮、絹の光沢感も相まって高級感…
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問屋の仕事場から
- 2018.07.26
- 絣を読み解く 絣柄技法編①
絣模様は糸の段階で色を染め分けた絣糸を使い織られる柄のことです。前回までは絣糸の製法を紹介しましたが、今回はその絣糸を使い織り上げる絣柄について解説していきます。
冒頭写真の大島紬の柄は経緯糸共に絣糸を使ったものです。多色に染め分けられた絣はまさに絣技法の集大成と言えるもので、泥染の地色にカラフルな手毬が浮き上がっています。絣の緻密さにおいて大島紬の右に出るものはありませんが、素朴ながらも人の感性に訴えかける素晴らしい柄がたくさん生み出されています。
絣模様を作り出す技法を4つに分類しながら解説していきます。
①緯絣(緯糸にのみ絣糸を使った柄)
絣糸で模様を作ろうとすると経絣か緯絣かどちらかを選択することになりますが、緯絣糸で模様を作るほうが容易なため様々な織物で緯絣が多用されています。仮に写真のウサギの柄を経絣糸で作ろうとすると経糸(13m)を張る段階で慎重に調整をしなければなりません。複数個所に柄が飛んでいた場合、織り始めの頃はきれいに柄合わせができていても、徐々にズレてくる可能性があります。一方、緯絣糸で柄を作る場合は絣を合わせる調整が一本一本融通がききますので織り進めやすいわけです。
また、緯絣糸で模様を出す場合は織り進めていく途中で急に柄を変えることも可能です。それを利用したのが写真のよう違う柄がたくさん繋がった商品です。一からこれを作ろうとすれば大変ですが、絣を作る際の治工具の減価償却は既に終わっていますので、見た目の豪華さに反してリーズナブルな価格になるのです。
次の大島紬のマス(枡)の柄も緯絣糸しか使われていません。ただの縞格子柄では面白くないので緯絣でちょっとしたアクセントをつける手法が多様されています。琉球の織物によく見られるツバメの柄などがその典型ですが、緯絣の場所は柔軟に変えることができますので、位置に変化をつけることで違う柄にすることができます。
そして緯絣のみで織られた複雑な柄がこちら。
大島紬の精緻な絣糸を使いうまく繋ぎ合わせると想いもよらない柄になります。蒔糊散しのような仕上りは後染め織物には決してできないテイストになり、とても存在感のあるものです。
②経絣(経糸のみに絣糸を使った柄)
複雑な絣模様を作るのには緯絣糸を使ったほうが容易です。しかしあえて経絣糸を使わないと表現できない模様もあります。絣の発祥は遠くインドに始まり、世界中に散らばりました。これらは「イカット:絣の意」と呼ばれていて大抵が経絣で織られています。鉛直方向に絣が走る経絣は雨絣や矢絣といった柄に多用されてきました。
柄の個所が限定されているうえ、着尺の3分の1の長さですむ帯の場合は経絣が使いやすいといえるでしょう。
着尺においても積極的に経絣を使った商品があります。経糸のセッティングさえ一度してしまえば、あとは緯糸を通していくだけなので、織り子さんの立場としては楽です。
一般的に緯絣より経絣のほうが色がはっきり浮き出て、コントラストを作るのに向いています。
そして経絣で模様を出す場合、緯糸の絣合わせの微調整、確認が不要なことから自動織機で織られる商品に適しています。作業者が複数の機をコントロールすることもできるので大きなコストダウンにつながります。一般的に緯絣より経絣のほうが色がはっきり浮き出て、コントラストを作るのに向いています。
緯絣、経絣だけでも絵絣を作ることができますが、経緯ともに絣糸を使うことで更に豊かな表現をすることができます。引き続き経絣糸、緯絣糸を両方駆使した柄について紹介していきます。