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問屋の仕事場から

2017.11.13
織技法と原材料がわかる伝統的工芸品(織物)一覧 

平成29年現在で伝統的工芸品の織物分野には現在37品目が指定されています。指定された織物は伝統マークの証紙を張り付けることができます。それらは伝統的技法で作られたことを証明するお墨付きともいえ、消費者にとっても見ず知らずの販売員の口上より、安心できる判断材料となっています。

 

各織物の詳細は一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会のHPから分かりやすく確認することができます。そこでは製造にあたっての条件、原材料も告示されています。こちらをもとにして各織物の織技法、使われている(使ってもよい)原材料を一覧にしてみました。

 

※生糸と記載がありますが、本来の生糸が意味するところは精練前の生の糸(law silk)のことです。しかし節を有する様々な糸に対して、機械繰糸した平滑な糸についても生糸(正確には本練絹糸)と呼称されています。

伝統マークのついた織物がすべて手織りであるかというと、実はそうではありません。リスト一覧では自動機の使用が認められている織物には〇がいれてあります。西陣織や博多織は紋紙を使ったジャガード織機で生産されていることが消費者に認知されているとおり、織工程の自動織機の使用も認められています。告示の生産手法の条件に「手投げ杼を使うこと」とあるものが織子さんが一つ一つ杼(シャトル)を通して打ち込む手織りです。

伝統的工芸品というと、すべて人の手による手仕事であるとの一般認識があるかと思います。しかしそのような縛りを設けてしまうと、市場に流通する価格にはなりません。「主要部分が手工業的であること」という条件のもとに、様々な工程で動力が使われ機械化されています。織物の場合は織り工程は全体工数のごく一部というケースが多く、この工程を自動化してしまっても問題はないという判断です。そして自動機使用が認められている織物でも複雑な絣を構成する商品については対応ができず、手織りで一つ一つ絣合わせがなされています。

織られる自動織機

手機の数十倍のスピードで織ることができる有杼織機、動力や騒音の問題もあり個人宅での作業には向かない。

一口に自動織機といっても様々な種類があり、伝統的工法に指定されているものは、写真のように作業者が織り具合を監視しないといけない有杼織機を使ったものです。杼を投げ、緯糸を打ち込む工程が自動化されているだけで、機械にセッティングする段取りは手機とほとんど変わりません。

一覧を見ると沖縄の織物がすべて手織りなのに対して、新潟産地では自動機が導入されているものが目立ち、モノづくりに対する産地の方向性をうかがい知ることができます。

 

使用する材料の種類はかなり柔軟性がある

紬と名のつく織物でも生糸の使用が認められており、紬糸しか使ってはいけないと指定されているのは結城紬ただ一点だけでした。久米島紬ですら生糸の使用が許可(経糸に使用)されているのです。また「同等の材質を有する絹糸」という表記があるものは産地の商品作りに対する柔軟性(妥協?)が見てとれます。

本来、紬とは経緯糸ともに紬糸を使って織られた織物の総称でした。日本各地では土地ごとの文化を吸収、技術が発達し様々な紬が生まれます。そして養蚕技術、機械の進歩により、生糸が安価で安定的に生産されるようになると、経糸を生糸に置き換えたり、生糸だけで織り進めることができるようになりました。代表的なものが大島紬で、紬と名前を冠しながら経緯糸共に生糸が使われ、製品の大きな特長となっています。

毛羽立つ結城紬

結城紬の耳の部分の拡大、経糸に対して細い緯糸が打ち込まれているのがわかる。

経糸に生糸を使うと緯糸を通しやすくなり作業効率が上がります。さらに経糸(生糸)より緯糸(紬糸)が太いと、それでだけ面積が稼げますので早く楽に織り上げることができます。その点、結城紬は経緯糸共に紬糸、しかも経糸より緯糸のほうが細いという厳しい条件で織り上げられているのです。

 

以上、リストを参考に各織物がどの様なものであるかを知る一助になれば幸いです。

 

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