おしゃれ着物として使われる紬ですが、その卓越した風合いを生地…
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問屋の仕事場から
- 2017.11.10
- 紬地をつかった表装、インテリア
紬の座布団の項では着尺や帯だけではない紬地の応用を紹介しました。今回は表装やインテリアへの展開の可能性について模索してみます。
まずは表装から、武者小路実篤の名言「この道より、われを生かす道なし。この道を歩く」、屏風に仕上げるにあたってこだわりの表具・表装を施してあります。普通は西陣織や吉野紙などで行われることが多いのですが、こちらには結城紬が使われています。
着尺からの流用ではなく、わざわざ表装用に誂えた贅沢なものです。書や絵画を求める際にはすでに表装、額装がされていることがほとんどです。しかしせっかく唯一無二の品なのですから、表装や額装を業者任せにせずこだわってみるのも一興です。
続きまして久米島紬の看板、表装に久米島紬が使われています。こちらは既存の着尺からの流用です。額装のサイズは幅がありますので、どこかで繋ぐ必要がありますがそこは表具師の腕の見せ所、全く分からない仕事がしてあります。
同様に他の絵の表装にも使っています。
また、様々な織物素材が昔から基底材(支持体)として使われてきました。麻布は油絵、日本画は絹といった具合に絵具との親和性、発色の特徴を踏まえて選ばれてきました。通常は絵絹と呼ばれる細い絹糸を高密度に織りこんだ絹布に描かれます。節糸が目立つ紬糸は繊細な筆使いが困難ですが、型絵染であれば様々な織物で表現することができます。
こちらは紬地に紅型を施した屏風です。
そして芭蕉布で作った屏風がこちら。
最後はインテリアとしての提案です。
襖などの建具に紬地を使うことで一風変わった味を出すことができます。廣田紬の社屋にはところどころに紬問屋ならではの趣向が凝らしてあります。
拡大したのがこちら、ゴケ無地と呼ばれる異なる色の経緯糸を使った結城紬が使われています。
こちらは一部に結城紬を使うことで程よいアクセントになっています。
そして展示会場の鴨居の上部には、染で霞模様を表現した結城紬が両面に施されています。
以上、廣田紬で表装やインテリアに使われているモノを例に紹介しました。
これらは生地に触れるわけではなく、風合いを直接楽しめるものではありません。しかし悠久のストーリーを刻む伝統工芸織物が常に目の見える範囲にあるだけで、どこか安らかな気分にさせてくれます。着物はいつか擦り切れてしまいますが、これらは建物と一緒に歳月を重ね、情趣ある空間を提供し続けてくれます。
贅沢ではありますが、一風変わった織物の使い方、魅力ある提案をさせていただきますのでご相談ください。