大変な猛暑日がつづきますが、夏でもマスク着用が求められる昨今…
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問屋の仕事場から
- 2020.10.14
- 布を愛する人へ シルクのマスク生地
『新しい生活様式』の中ではマスクは必需品、様々なメーカーからオシャレマスクが登場しています。廣田紬においても呉服問屋ならではのこだわりの絹マスク生地を展開しています。
シルクは人の肌と親和性が高く、常に口周りに触れるマスク素材として理想的な素材です。古来より高級素材として様々なシーンで重用されてきました。何よりもそのエレガントな光沢、大変上品な高級感を放ちます。
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優美な光沢を放つシルク生地、光がシルク独自の糸形状に乱反射している。
使い捨てマスクへの抵抗、海外産品への不信感もあり、こだわりの布マスクをされる方も増えています。その中で高級素材のシルクが見直されていて、将棋の藤井聡太さんが着用して話題になったのもシルクのマスクでした。絹素材といえば扱いにくいイメージがありますが、マスク用途であれば家庭で洗濯することができる生地も多く、たくさんのラインナップが登場しています。
贅沢な着物用の白生地マスク
中でも振袖や訪問着などのフォーマル着物に使われる白生地、チリメンと呼ばれる美しい生地が丹後(京都府北部)や長浜(滋賀県北東部)で作られています。そして見る角度によって美しく模様が見え隠れする、紋意匠を施した様々な織物も生まれています。着物作りのメッカである京都においては様々な美しい白生地が集まってきます。
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様々な紋意匠の白生地、織り組織によって模様が浮かび上がる。
友禅染などに使われる白生地は高度な製織技術で織られていて、贅沢品向けだからこそ許される高級な素材に仕上がっています。世の中には様々なマスク用のシルク生地が出回っていますが、最高級の着物に仕上げるための下地として作られた白生地は、それらと成り立ち全く違うものです。
刺繍や友禅染といった熟練の技で加工された着物は数十万円〜数百万円になり、高額品の下地として間違いのない品質管理が求められるのです。
廣田紬ではそれらの着物用の美しい白生地からマスク用生地に向くものを選別、秋冬向けとして販売を開始しています。
例えばこちらの横方向に霞のような地紋の入った白生地、
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美しい横霞の白生地、上品で細かな紋意匠。
マスク生地にした場合、実に上品な仕上がりとなります。
プロの和裁士が美しいマスクに仕立て上げたのがこちら。
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従来の立体マスクの形状とは一線を画する、和裁スペシャルマスク。
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通常の立体マスクではなく、鼻に当たる部分は接合面がない一枚布。
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和裁の技術である「くけ縫い」を使用、裏地は理想的な裏生地のアイスコットン襦袢生地。
実際に着用していると、どこで買えるの?と聞かれるほどの美しさなのです。もちろん家庭で洗濯することが可能ですし、絹であることのデメリットは一切ありません。こちらは男女兼用でお使いいただける紋意匠ですが、もっとオシャレにという方には花柄などの紋意匠もあります。
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季節感を感じさせない抽象的な唐草文様(アラベスク)
手芸屋さんで扱っているシルク生地とは全く違う上質感、こだわりのシルクマスク生地として一度試してみていただければと思います。
そして、白一辺倒だけでは面白くないという方向けに、染め加工も独自に行いました。
パステルカラーに染色された生地は絹の特性を失うことなく、それぞれの美しい色を放ちます。肌に直接触れる生地ですので染料にも人体に影響の無い安全な素材を使うなど、安全面、環境面にも配慮しています。
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数量限定で販売されていた透け感のある夏向けの白生地(地紋はバラ)。
これらの高級な白生地、残念なことにコロナ渦で本来の行き場を失っています。イベントや式典が中止となるとフォーマル着物を誂えようとする動きはパッタリと途絶え、産地は静まり返っているのです。
今夏の涼しいマスク生地需要においては、浴衣や襦袢などに使われる麻生地が飛ぶように売れ、産地も在庫切れとなるうれしい悲鳴があったケースもありました。本来の用途ではありませんが、秋冬目向けの高級マスク素材として、着物用のシルク生地が少しでも貢献、皆様に日本の着物生地の良さを知っていただければ幸いです。
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紬生地を扱う廣田紬ではマスク用紬生地(シルク)の販売もしております。