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問屋の仕事場から

2020.12.28
至高の表現力、大島紬の総絣とは 

一般的に総絣といえば生地全面に絣模様が散っている柄をさしますが、大島紬で総絣といえば少々意味が異なってきます。

冒頭の写真はトンボや鳥が飛んでいるようにも見えますが、椿を抽象化した柄が飛ぶ大島紬です。周りにはカタスの十字絣が全面に敷き詰められています。

葉っぱの部分を中心として白く浮き出る部分があります。こちらが総絣という技術で作られた箇所で、泥染めの無地場からポンと柄が浮き出るように見えます。なぜ浮き出るような白を作ることができるのかというと、白く防染された絣糸が多いからなのです。

葉っぱの箇所を拡大してみてみます。

緯糸は総て絣糸、6本に1本が絣糸。

総て緯糸が絣糸であることがわかりますでしょうか。

総絣はその名の通り、総てが絣であるという意味です。大島紬の最高峰と呼ばれる9マルキ(一元)でさえ、生地を構成する経緯の絣糸の比率は66%です。仮に経緯共に絣糸100%するとなると想像を絶する困難な工程になってしまいます。

なので大島紬において総絣とは緯絣糸が切れ目なく続いて柄を出した「箇所」のことを言います。

色糸を使えばさらに柄が浮き出る、乙女椿は廣田紬で好んで多用されている。

総絣を使うことで緯絣糸の本数が大幅に増えてしまいます。経糸は一度張ってしまえばよいのですが、緯糸が総て絣糸だとすれば一回一回の横方向に絣あわせが必要になってきます。織り子さんは気を抜くことなく慎重に織り進めていく必要があります。

製織途中の総絣の大島紬、葉っぱの輪郭や葉脈のコントラストを表現する。

しかしコストUPに繋がっても、輪郭部分をはっきり浮かび上がらせたい場合や、濃淡をつけてコントラストを強調したい時、こだわりの逸品に使われるのです。

大島紬の基本は十字絣の集合である「点」の絣柄ですが、総絣は「面」で柄を表現することができます。

菊柄の大島紬、中の花弁と外側の花弁でコントラストが異なる。

桜の大島紬、総絣でハッキリした花弁とカスれた花弁の強弱を作り出す。

椿柄の大島紬、総絣を使った輪郭がくっきり浮き上がる。

世界一緻密な絣織物である大島紬、長年にわたる切磋琢磨の果てに奥行きまで表現することが可能になりました。他の織物ではなし得ない絣表現の極致である総絣、様々な種類の絣を組み合わせることでハット引き込まれる美しい表現を見せてくれます。

大島紬はマルキの数(経絣本数の多さ)ばかりが注目されがち(高マルキ至上主義)ですが、緯絣を総詰にする総絣は絣の表現力を大きく増すさらに高度な熟練の技です。

心をハットさせる美しい大島紬には、どこかに美しい総絣が入っているかもしれません。是非もう一度目を凝らして見て見てください。

笹の濃淡を表現。総絣を使うことで黒、グレー、白の三種類の濃淡を作り出すことができる。

総絣の応用、丸紋が飛ぶ大島紬。廣田紬のアイデア特許的商品。

一元絣の総絣、経絣が2本になるのでさらに色が濃く浮きでる。

 

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