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問屋の仕事場から

2024.09.07
シンプルイズベスト、男女兼用で活躍してくれる十字絣の大島紬

大島紬においては精緻な十字絣を使って様々な絣模様が展開されていますが、柄を作らずに全面に十字絣が配置されたタイプもあります。それらは無地感覚で着用することができ、飽きのこない定番品として老若男女にオススメです。

十字絣はその名の通り、経絣糸、緯絣糸を交差させて十字模様を作る絣です。正確には十字ではなく「キ」「#」といった形になります。

縦横の絣組織の比較

組織の詳細は以前に記載した「大島紬の組織 ~一元式とカタス式~」を参考にいただければと思います。

一口に大島の十字絣といっても地色、絣の色、絣の密度、絣の大きさ、絣の組み合わせ方法によって様々なパターンがあります。わずかな違いですが、全体の雰囲気が変わってきます。今回は十字絣の商品を比較しながら、その違いを知っていただければと思います。

組織、一元とカタスによる違い

写真の十字絣はどちらも7マルキの十字絣と呼称されている商品ですが、左は一元(ヒトモト)の7マルキ、右はカタスの7マルキです。
ぱっと見て絣の数は変わらないかもしれませんが、一元の方が絣の表面積が大きいのではっきりと絣が浮き上がって見えます。素人目にはカタスの方が細かく見えてしまいますが、経絣糸の本数は1/2とコストダウンが図られています。
一元絣の商品は製造の難易度が高く、なかなか作られることがなくなってしまいました。
ぎっしりと全面に風車のような綺麗な絣が敷き詰められた奇跡のような一元の十字絣、なかなかお目にかかれない逸品です。

地色、絣の色による違い

大島紬といえば泥大島の茶系をイメージしますが、様々な色表現があります。有名なのは白大島で、地糸(絣糸以外の生地のベースとなる糸)が白いタイプです。
白大島の十字絣も存在し、白をベースとするためかフォーマルさを演出してくれます。男性にも人気があることから広い幅で作られることもあります。地糸をベージュ寄りに染めて光沢感を抑えたマットタイプなど、絣以外のところでも差別化した商品作りがされています。
また、絣の色を変えたパターンがこちら。
この大島紬はすべて地色は泥染の黒、十絣の組織が同じ(2元越)ものです。色が入っている絣の箇所が全体面積のわずかであっても、イメージがガラッと変わります。このような多色の十字絣は珍しいものとなってしまいました。

柄による違い

十字絣の周りを枠で囲む等のデザインの商品もあり、こちらも十字絣の一種ということができます。
凝った柄は男物の高級品として西郷柄と呼ばれています。普通の十字絣よりピッチが広くなることで絣の存在感がUPしますし、様々なパターンバリエーションで選ぶ楽しみを増やしてくれます。
逆にこちらは十字絣をさらにシンプルにしたパターン。
大島紬は7マルキ、9マルキ等、絣の精緻さを「マルキ」という単位で呼称します。7マルキの十字絣、9マルキの十字絣といった具合ですが、この写真の柄のようにピッチが大きな商品も成立します。

あえて絣部分を長く設計することで、組み合わさった時には絣の表面積が大きくなります。
7マルキ、9マルキという枠を超えて、絣の精緻さを争わずに絣自体の美しさを主張するわけです。絣が細かい方が偉いという風潮に一石を投じる美しい逸品だと思います。
廣田紬ではシンプル十字絣を縞格子でアレンジした柄を作成してきました。
別稿で紹介していますので、そちらもご覧いただければと思います。
以上、大島紬の十字絣といっても様々なタイプがあります。シンプル十字絣は目立ちこそはしませんが、飽きのこない定番品として大活躍してくれます。
一着目の大島紬としてもおすすめですし、是非その美しさに触れてみてください。

 

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