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問屋の仕事場から

2019.05.11
精緻の極み200亀甲の大島紬

白い反物

大島紬の定番ともいえる亀甲絣、反物の巾に亀甲が100個並ぶ100亀甲が主流ですが、精緻の極みともいえる200亀甲のタイプも存在します。

亀甲絣については前項で詳しく解説していますが、組織やコストの関係から160亀甲あたりが限界でした。しかしこの大島紬はなんと200亀甲というレベルを達成しています。実際に尺差しを当てて数えてみます。

亀甲をかぞえたもの

実際には一寸の巾に21個の亀甲、耳内(絣内)10.5尺なので220個の亀甲が並ぶ。

一寸の巾に極小の亀甲絣が20個以上敷き詰められています。こちらは男物の巾があり、実際には一列に220もの亀甲が敷き詰められています。12.5mの長さの反物に敷き詰められた亀甲の総数はなんと100万個以上に及びます。

物差しで巾を測る

ここまで来ると近くで見ても無地に見えてしまうレベルで、相当目を凝らしてみなければ亀甲であることがわかりません。

組織を拡大してみます。

組織を拡大したもの

経絣糸1本、地糸2本の繰り返し。これはカタスの9マルキに相当する組織。

経絣糸1本に対して地糸2本の繰り返しになっているのがわかります。160亀甲がカタス7マルキ(絣1:地3)の組織でしたので、これを9マルキ化することで200亀甲を実現していたのです。総経絣糸は440本、これはカタスの12マルキに匹敵する本数で、織元によっては12マルキと呼称して販売するケースもあるでしょう。

こちらはカタスの9マルキの蚊絣と亀甲絣が同居する別の白大島の生地です。

こまかな絣の生地

経糸のピッチが絣1:地糸2で同じであることがわかります。カタスの9マルキの商品自体は珍しいものではありませんが、今回のようにすべて亀甲で構成されているとなると話は別です。絣合わせをする交点が増えるため、織り進めるのが格段に難しくなり相当な根気が求められるのです。

 

以前に200亀甲の塩沢紬を紹介したことがありましたが、組織はカタス7マルキ(絣1:地3)、細い糸を使い経糸のヨミ数を増やすことで200個の亀甲を作っていました。同じやり方で200亀甲の結城紬が作られたこともありましたが、細い糸を使うということは、普段着である紬の観点からすると耐久性の面で好ましくありません。しかし200亀甲の大島紬は組織の構成そのものを密にして耐久性も両立させることに成功しています。

機を織る職人

大量の絣糸を効率的に作ることのできる締め機。

大島紬では絣作りに締め機を使うので、結城紬の絣作りと比較すればかなり省力化されています。しかし糸作りは比較的簡単にできてもキレイに絣合わせを行う職工がいません。十字絣で絵絣を作る場合は少々ずれてもなんとか絵になりますが、亀甲柄はしっかりと六角形が構成されているかどうかアラが目立ちます。疋物にもなると200万個もの亀甲を作っていかなければいけません。絣あわせが必要な交点の数は気の遠くなるような数字になり、1疋(約25m)にわたって最後まで織り上げるのは奇跡ともいえます。

遠くない将来に200亀甲詰柄の大島紬は幻になってしまうことでしょう。

白い反物

200亀甲のベタ絣を織る職人は奄美(下)、鹿児島(上:今回紹介のもの)に各1名しかいない。

 

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