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問屋の仕事場から
- 2017.11.21
- 伊達男のための男物白大島
大島紬で男物の定番といえば100亀甲の絣柄で、それも藍や泥茶など濃いめの色使いが主流となっています。男性向けの着物というと濃い色であるとの固定概念があるかと思います。しかし洋服に明るい色があるのと同じで、着物も濃い色一辺倒ということはありません。今回は粋な男性のための白大島の紹介です。
一昔前は結納の際の持参金で男性に大島紬を作りました。男物は着物と羽織で2反分(1疋)必要です。奇を衒わない定番の濃い色の亀甲絣柄は大量に作っても、そのうちいつかは売れるので産地でも需要以上に大量に生産してきた過去があります。そうなると在庫がダブつき、本当は恐ろしく手間のかかる亀甲総絣柄が非常に割安な価格で消費者の手に渡るようになりました。
消費者は大変得をしたことになりますが、濃い地色の亀甲絣は市場にたくさん出回り、希少価値といった観点では平凡なものになってしまい、面白くありません。それ自体は確かに良いものなのですが、もはや定番すぎるきらいがあります。
冒頭の写真、亀甲絣の男物を並べてみました。一番上は白大島の亀甲絣男物です。技術的には他の大島と変わらない平凡なものですが、産地でも生産数が少なく、とても希少価値のあるものです。
春先に白大島を着て出かける男性、想像しただけでとてもお洒落なものです。お正月などのおめでたい場にも粋な装いで活躍してくれるでしょう。
引き続き、普通の大島紬に飽き足らない男性向けの白大島を紹介してゆきます。
まずは定番の蚊絣、男性向けの広巾で織られたものは貴重です。こちらの商品はカタスの9マルキ、亀甲絣に比べて単純なように見えますが、絣合わせをする数が多いので慎重に織り進めないといけません。通常の100亀甲に比べて数倍の手間がかかっている商品です。
あえて蚊絣を強調したいという方には一元絣がおすすめです。先のカタスの9マルキのように絣が細かすぎると無地感覚が強くなります。この商品は二元越と呼ばれる絣と絣に間隔を持たせたタイプになります。
大島紬の基本でありながら忘れられてしまった一元絣がしっかりと浮かび上がり、絣の力強さを主張してくれます。
次は残糸を使った商品です。残糸とは別の商品で絣糸を作る際にできた余り糸のことです。残糸を経糸に使うことでよい味を出しつつも絣を作る手間を省くことに成功しています。
こちらはクズシ織(網代)の白大島、白というよりかはグレーに近いので活用の場が広がります。10本クズシのため、網代模様が遠目でも目立ちます。
こちらは赤尾木西郷と呼ばれる凝った柄、四角の中に十字絣が入る西郷柄の一種です。
白大島の西郷柄は珍しく、二本づつの経絣と緯絣ががっちりと組み合わさった一元絣が力強く浮き出ます。
そして反物の巾に200個の亀甲が並ぶ、200亀甲の大島紬、寸間に20個以上もの極小の亀甲が並びます。
遠目で見れば無地にしか見えないほどの極小の亀甲、一つ一つを熟練の織り手が絣あわせをします。一反あたり100万粒以上の亀甲(写真は疋物なので200万個)が敷き詰められています。
そして、ただでさえ珍しい男物の白大島の中でも極め付けの逸品がこちら。
その柄の緻密さと言ったら右に出るものはありません。需要の少ない男物にこれだけのパワーを注ぎ込む胆力は並外れたものではなく、織り元のこだわり、プライドが伝わってきます。
男性で明るい色の着物はハイセンスすぎて、着こなすのが難しいと思われるかもしれません。しかしそこは和服のマジック、白いズボンを着こなすには長身、細身でないといけませんが、着物の場合は体型を選びません。仕立てさえしっかりすれば驚くほど馴染んでくれるでしょう。そして帯や帽子などの小物選びも楽しくなってしまいます。
以上、珍しい男性向けの白大島の紹介でした。