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問屋の仕事場から

2018.01.06
平織で立体感を表現するクズシ(網代)織り

クズシの久米島紬

本場久米島紬の別注品が織りあがりました。クズシ織の最高の風合いを持つ素晴らしい逸品、幅が広く男物に使うことができます。今回はクズシ織の技法をふまえて商品説明をしていきます。

久米島紬の男物は珍しくなかなかお目にかかれません。泥染めなどの無地もありますが男物に使うとなると、巾が足りませんので別注する必要があります。この商品はホルトノキと車輪梅を使い染め上げた二種類の糸を組み合わせたクズシ織です。

クズシの生地表面

クズシ織とは模様が江戸時代に和算で使われていた道具、算盤の上に置かれる算木の様子からきています。「くずす」という言葉は形状を簡素化するという意味もあり、算木を崩した模様から「算木崩し」という古典柄として親しまれてきました。他には籐むしろの編み方から網代織とよばれたり、沖縄ではヤシラミー(鑢目)という言い方もあります。

異なる濃淡色の糸を交互に配置しているため、一つのブロックに複数のラインが入ります。2本の場合は2本崩し、3本の場合は3本崩しと表現します。織物に立体感と深みを与えるクズシ織、今回の久米島は8本崩しとなっており、崩し模様が強調される大きさに仕上げてあります。

 

組織の拡大、実際には経糸(生糸)と緯糸(紬糸)の太さが違うのでバランス調整のため8×7クズシとなっている。

 

実はシンプルな平織のクズシ織

このクズシ織、素人目で見ると絣のようにも見え、とても手の込んだ織り方をしていると思われます。綾織のように綜絖を何枚も使い、糸を複雑に浮かし模様を作っているのでしょうか。

実はクズシ織は一本一本が交差する平織で作られています。そしてその手法は非常にシンプルで、糸の配列にひと手間加えるだけなのです。

経糸を配列させるときにABAB・・・と規則正しく並べるのですが、これをABABBABAと同じ糸を一度連続して配置をおこないます。そして緯糸もそれに倣って同じように織り込むとあら不思議、くずし織の完成です。経糸さえしっかり配列してしまえば、あとは間違えないように緯糸を打ち込むだけなのです。

先ほどの久米島の拡大は毛羽立ちのある紬糸のため配列がわかりにくく、生糸で織られた大島紬を例にして具体的に見ていきます。

こちらは定番の男物のクズシ織り、整然と4本クズシが敷き詰められています。

拡大して詳しく組織をみていきます。経緯ともに節のない平滑な絹糸のためハッキリとわかります。

クズシの生地拡大

画像中心部、経緯糸の連続する黒と黒が合わさり、交点ができているのがわります。

経糸の配列が 黒白黒白黒白黒白黒黒白黒白黒白黒白黒・・・

緯糸の配列が 黒白黒白黒白黒白黒黒白黒白黒白黒白黒・・・

 

繰り返しパターンのうちに4つある白の箇所が算木の棒に見え、4本クズシとなります。3つであれば3本クズシ、5つであれば5本クズシです。

織り方が単純といっても最後まで緯糸を同じ間隔で打ち続けなければいけませんので神経を使います。一定のプログラムで動く自動機で織られる場合は間違いはありませんが、手仕事の場合は稀ににミスもあります。今まで3本崩しだったのが、あるところだけ2本や4本崩しになってその箇所が横段に見えることもあるのです。少し気を抜くとミスが発生しますが、細かな場合、織っている本人も気づかないことがあります。

間違ったクズシ柄

目を皿にして検反しなければわからない例、そのまま流通して、最終消費者も気づかないことも多々。

 

 

以下、崩し織の例をいくつか紹介していきます。

 

100%草木染紬の5本クズシ、クサギの実から抽出した青色です。とても淡い色ですが、これが単純なハケメ(濃淡一本づつの配列)だと色が埋もれてしまいます。クズシ柄にすることで色のメリハリが浮き立つようになっています。

 

クズシの座布団

こちらは紬の座布団、15本以上のクズシになっています。遠目にもパッとわかるクズシ柄が強調されたデザインとなっています。

 

こちらは別の大島紬、このようにすべての柄をクズシにすることなく、少しアクセントを加えた柄にすることもできます。格子の交点に4本クズシが現れるおしゃれな柄です。

 

芭蕉布のクズシの帯

こちらは芭蕉布(帯)のクズシ織、太鼓の部分が花織になっています。沖縄ではクズシ織のことを鑢(ヤスリ)の目の模様からヤシラミ―といいます。芭蕉の糸自体が太いのでより立体感を得ることができます。

 

秦荘紬の帯くずし

こちらは秦荘紬の帯、非常に大きなピッチのクズシ織です。大胆なクズシ柄は大きな市松模様のように見えます。

 

丹波布の八寸帯、単純なクズシ柄ではなく配列をさらに工夫することで意匠を作り出しています。

 

下井紬の男物着尺、クズシが不規則に散っているような意匠。

 

大きなクズシの真綿帯

飯田紬の帯、経糸の倍はあろうかという太さの緯糸が使われています。組み合わせて正方形にしようとすると経糸は緯糸の倍必要になり、少しアンバランスな構成になります。

 

秦荘紬の八寸帯、クズシのピッチをランダムに配置。

 

結城紬の網代織帯、異なる太さの糸の組み合わせで絣のように見えます。

 

 

そして経糸と緯糸の配列の組み合わせを応用すると思いもしない面白いパターンを描くことがあります。

実際に糸を染めて織るのは大変な手間がかかるので織物シュミレーションソフトを使います。

こちらは少々複雑な配列で経緯糸を組み合わせたもの。緯糸には青、濃緑、黒、茶のカラーバリエーションで試しています。

織物シュミレーションソフトの絵

経糸の配列 黒黒黒黒白黒白黒白黒白黒黒黒黒白黒白の繰り返し、緯糸も同様に組み合わせる。

単純なクズシ柄ではなく、複雑ながらも洗練された様子となっています。

様々な配列、色を実際に機にかけることなく試すことができますが、実際に織りあがってくると完全には一致しないのがモノづくりの面白いところです。

 

糸の配列を工夫するだけでぐっとデザインを引き立たせてくれるクズシ織、糸が浮いてしまう綾織とは異なり、一本一本がしっかりと交差する平織ですので普段着として重要な耐久性も兼ね備えます。遠目に見れば無地感覚の織物に見えますのでおしゃれな男物としても最適です。

無地が好きな方も選択肢の一つに加えてみてはいかがでしょうか。