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問屋の仕事場から

2017.06.30
プロでも難しい目視による反物の検反 

結城紬の不合格印

産地から納品された反物は不具合がないか、念入りに検反を行います。

どういったものが検反でNGとなるか、今回はその一端を紹介します。

検査項目は長さ、幅の計測に始まり、シミ、ヤケ、汚れ、織難がないか等多岐にわたります。自動織機で大量生産されたものは均一な品質が保たれた製品となりますが、手作業による伝統工芸織物は、どうしてもクセやムラが出てしまいます。また、自然由来の材料を使うため糸の質や染具合は一定にすることが容易ではありません。

その中で商品として許容できる範囲を見極めるのはとても困難ですが、長年の経験と勘で通常では検出できない不具合個所を探し当てていきます。

・織難(緯糸色違い)

紬のB反

糸印の個所、僅かではあるが、角度によって明確に色味が異なっている。何らかの理由で違う色の緯糸が混入してしまい、そのまま織り進めてしまった。

 

・織難(横段)

大島紬の横段

こちらは緯糸の打ち込みムラで横段になっています。どうしても手織りのため、ある程度は許容されますがこちらはかなり目立つため難物扱い。織手の技術不足によるもの。

 

・織難(経糸のツレ)

大島紬の経て筋

こちらは大島紬、絣合わせをするために針で糸を引っ張るのですが、その際に経糸に無理なテンションがかかります。これは一部が切れてしまい矢印方向に長い縦スジとなってしまいました。大島紬は少なからず絣合わせの線キズがありますが、あまりにも目立つものはNG判定をしています。

 

・汚れ

大島紬のシミ

織る際に付着した油分などが、湯通し後に浮いてくることがあります。単なる糊残りや、油汚れですと除去が可能ですが、鉄分を含んだ汚れはしみ抜きが困難です。

・柄違い

大島紬の柄抜け

 

同じピッチで横段の柄が続いていますが、一か所だけ柄が抜けています。経糸は一度整経してしまえば後は間違えようがありませんが、緯糸は注意しないと柄が抜けてしまいます。織子さんが集中力を欠いたのでしょうか。立ち会わせでどうにでもなりますが、生地としてはNG判定になっていしまいます。この商品は産地組合の検査では「合格」となっていますが、検査員の目も完全ではありません。

検反を待つ入荷した商品たち、機械織りのロット商品も全て全数検査する。

大変な手間をかけて織られた商品をNG判定してしまうのは苦渋の決断ですが、品質を保証するための重要な作業です。不具合品は修正可能なものは手直ししますが、修正不可のものは「わけあり品」として価格を抑え流通することになります。

短尺(3丈2尺以下 12.1m)であれば小柄な人によっては使えますし、織難が端の個所であれば仕立てなどでうまくカバーできる可能性が高く、これらは本来の価値からしたら大変なお買い得品といえるでしょう。

検反台と尺差

数十年にわたり使用されている検反台。幾万反にわたる検反で塗装(漆)が剥げている

通常、工業製品の検査は明確な検査項目、基準に基づいた「検査成績書」に準じますが、工芸製品である伝統工芸織物の場合、その道のプロによる目視検査が中心となります。特に織物がスリップ(引け)するか否かなどは、長年の経験による勘でなければ見極めることができません。

地味な作業ですが、問屋の格が試されているといってもよいでしょう。

廣田紬ではお客様での不具合発生を限りなくゼロになるよう、受け入れた品物の全数検査を行っております。

削れた物差し

幾万反に及ぶ検反ですり減った二尺差し。

 

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