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問屋の仕事場から

2023.10.10
大島紬の男物はアンサンブルで購入するのが正解!?

男性が大島紬を購入する場合、疋物(2反分)の状態で購入して長着と羽織をセットで作るというのが定番でした。

長着と羽織が同じとなる組み合わせを「アンサンブル」といい、大人の男性が長着と羽織を作るには(3丈2尺)+(2丈4尺)=5丈6尺(21m程度)あれば十分で、通常アンサンブルの1疋は5丈6〜8尺程度で作られています。

しかし大島紬の場合は1反の検査基準「長さが3丈2尺5寸(約12.3m)以上あること」が決められており、それを2反分(25m弱)で1疋としています。25m近い反物の始めと終わりには、それぞれ証紙が1枚ついています。

すると1疋単位で大島紬を購入して長着と羽織を作成した場合、4mもの長さが余り布として発生することになります。大島紬は柄にもよりますが熟達の織り手でも1日に数十センチしか織り進めることができません。なんとも勿体無いので残布はそのまましまいこまずに。巾着や小物などに再加工してほしいものです。

「アンサンブル」は長着と羽織が同じとなる組み合わせです。昔からの慣習で男性着物の上下は同じもので揃えるのが定番で、スーツのジャケットとパンツはきっちりと揃えないといけないという感覚です。昔からそのルールを引きずり、大島紬の男物は疋物が定番となり販売されつづけてきました。

定番の大島紬の男物100亀甲のアンサンブル。

洋服だとカジュアルにジャケットとパンツは違う組み合わせが普通になった今、着物においても長着と羽織は同じで揃えなくても違和感はありません。特に紬は正装ではありませんから、長着と羽織を別のもので組み合わせる方が粋、特に着物を着慣れた方はその傾向が強いように思われます。そうなると初心者、着物を誂えるのが初めてという方に、とりあえず大島紬をアンサンブルでお勧めしておけばよい、というセオリーも如何なものかと思います。

アンサンブルで仕立てた大島紬、上下が同じだとフォーマル感がでる?

上下別のコーディネートは少々センスが求められますが、色味が渋い男物の場合はどんな組み合わせでも合うケースが多く着まわしが簡単にききます。同じ色調でもすこし濃淡が違うだけ、あるいは素材が違うだけで随分イメージが変わりますのでチャレンジしてみてください。

羽織を少し濃い色の紬織物に変えてみたケース。

大島紬のアンサンブルを反物に切って販売することはできるの?

通常のアンサンブルで設計された織物は長着と羽織が作れる長さですが、大島紬は長着が2反取れるように作られています。気に入った柄であっても羽織は不要だという場合、お店の人に「反切りできますか?」と問い合わせてみましょう。

一疋をちょうど半分に切って「反切り」してしまっても、片方にもきちんと大島紬の証紙が付いておりしっかりとした商品として成り立ちます。そして男性の場合は3丈少しあれば十分足りますし、販売店側は半分で切らずに必要数量だけ切ることで「寸足らず」を確実に防ぐことが可能です。

各端に証紙が2枚貼り付けられている大島紬の男物、シリアルは連番である。

羽織を作ったとしても4mものあまり布が発生してしまう大島紬、必ずアンサンブルで揃える必要もない昨今、ぜひお店側に提案してみてください。

 

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