タップして閉じる

- ブログ -
問屋の仕事場から

2023.10.17
杢格子の結城紬

その昔はたくさん作られていた杢糸づかいの結城紬、今となっては珍しい杢格子の結城紬が入荷してきました。

杢糸とは複数の糸を絡ませて1本の糸にした撚糸の一種です。木の板などの木目を「杢」と言いますが、木目のように味のある糸づかいということで杢糸と呼ばれています。

結城紬は糸を撚らずに真綿から引き出した無撚糸が特徴ですが、その無撚糸を2本合わせて撚り合せて杢糸を作ります。すると一本の糸に色の異なる箇所が現れ、絣糸のような味のある糸が出来上がります。

木の杢目を背景に撮影した杢糸(別の生地から抜いたもの)の写真。

生地の拡大写真、格子の枠に杢糸が使われているがわかる。

杢糸を使って織り上げることで、味のある霜降りのような生地になります。単なる無地では面白くないということで、昔は男物向けにたくさん作られていました。普通の糸より太い杢糸を使うことでしっかりとした地厚の生地に仕上がり、多少重量が嵩んでも男物らしさがあって良かったのです。

過去に製作した杢無地(見本帳より)

さて、今回入荷したものはそんな杢糸を使った小格子の柄です。絡み格子とも呼ばれる柄は、経緯の一部に杢糸を使用し長方形の格子柄を作り出しています。仮に杢糸を使わずに普通の糸で格子を作るとなると、一本一本太細が違う結城の手紬糸であっても、はっきりとラインがでてしまいます。

杢糸が入ることで、ただでさえ味わい深い結城紬の生地がさらに豊かなものになります。

またこの商品は高機ではなく地機で織られてます。

杢糸を使う場合は生地が地厚となります。写真は極端な例(比較対象が160亀甲糸の結城紬)ですが、巻き反にするとその差は歴然でこれが1疋(2反分)となるとかなりの大きさになります。

結城紬を製織する際は通常は疋物で織り進めます。地機で織る際には織りあがった生地が、織子さんのお腹の手前に巻かれていくのですが杢糸を使った地厚な生地が一疋(2反分)となると、かなり大きな巻反径となりの作業の邪魔、負担になります。

結城紬は絣もの以外(無地、縞、格子等)は高機で織られることが多いですし、あえて扱いが難しい杢糸タイプを地機で織るこだわり、プライドが見て取れます。

杢格子は男性もの向けに作られることが多かったのですが、こちらは1尺3分程度と普通のサイズに仕上がっています。結城紬を知り尽くした女性にもおすすめしたい、まさに通好みの結城紬と言えるでしょう。

 

絡み格子(杢格子)の見本生地、昔は男物向けにたくさん作成していた。

 

廣田紬にご興味をお持ちくださった方はこちら
詳しくみる