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問屋の仕事場から

2020.01.25
とっておきの結城紬の財布

全国にはたくさんの伝統工芸織物がありますが、そのハギレを利用した様々な小物が作られています。反物の数十分の一の面積しか使わないハギレを使った小物あれば、最高級織物である結城紬においても気軽に手にすることが可能です。

廣田紬では結城紬の小物を作成、上得意様向けのノベルティとして配布していたことがありました。今では考えられない贅沢な時代があったものですが、当時作成したものがまだいくつか残っています。生地を革に張り付けて仕立てたもので、お札が入る長財布や折り畳み財布、名刺入れなどを作成していました。

結城紬はその糸代だけでも大変な金額になるもので、注文のサイズや規格より長く織ることは大きなコスト負担となってしまいます。しかし昔はおおらかなもので、ある程度長く織ってもらい見本裂としたりしていました。見本裂をとらない副反などの端を切り、余ったハギレを使うことで各種小物を作成していたわけです。

結城紬の織り端、近年は見本裂を採る余裕がないほどシビア。

長財布を作るとなると20㎝×20㎝程度の生地が必要となり、反物巾をちょうど半分に切って使うことになります。このようなものをまともに作ろうとすれば新品の反物を裁断して作るほかなく、1ロットで120個(12.5m/20㎝×2)という数量が必要となってしまいます。大量に生産されていた時代だからこそできた贅沢なもので、今後はなかなか作ることのできない代物です。

長財布に張られた生地、縞立って見えるのは結城紬の特徴。

 

無撚糸から作られる結城紬は毛羽立ちやすく、いつかは擦り切れてしまいます。しかし財布は毎日使うものですから、それなりに耐久性が求められます。求められる機能と素材の特性が相反する結城紬の財布、長く使うにはとっておきのシーンに限定して使うのが正しい使い方なのかもしれません。

贅沢な使い方をしていたノスタルジーな遺物、ごくわずかですが在庫ございますのでお問い合わせください。

 

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