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問屋の仕事場から

2023.10.20
多良間島でつくられる「たらま紅紬」

非常に珍しい織物、たらま紅紬が入荷してきました。

「たらま紅紬」は沖縄県の多良間島でつくられる織物で、島でとれる紅花を使って染めた糸を使った紬です。多良間島は宮古島と石垣島の間に位置する人口千人あまりの島で畜産や農業が主な産業となっています。

宮古島からフェリーで2時間という多良間島

多良間島では琉球王朝時代には首里王府へタラマバナ(紅花)を献上していた歴史がありましたが、近年は栽培が途切れていましたが新たな島の特産物とすべく「たらま花保存会」が発足しました。

紅花は漢方の婦人薬として利用されており、ハーブティー(紅花茶)として加工されます。最紅花から取れる色素からは鮮やかな赤い色の染料を得ることができ、天然色素として和菓子、めん類、漬け物などにも使われています。 紅花は絹糸を赤に染める染色材料としても優れており、山形県では紅花を使った織物が有名です。

紅花を集めて餅状にして天日で乾燥させる「紅餅」

多良間においても特産物である紅花を使った織物制作がされています。そこに八重山藍(インド藍)やクチナシ、フクギなどの100%植物染料を使って織り上げたのが「たらま紅紬」です。島に自生する植物から染料を作ることにこだわった優しい色合いの100%草木染めの紬です。

そんなたらま紅紬でですが、今回入荷したものはさらに特徴ある逸品です。

なんとも言えない渋い色味なのですが、その染料は紅花、藍、アカメガシワから採られています。経糸に4種類、緯糸に3種類それぞれ違う色の糸が確認できましたが、それらの多色の組み合わせで絶妙な灰赤色が出来上がっています。

織り端に紅花を使ったピンク糸が織り込まれていますが、ところどころ経糸にもピンクが混ざっています。

その風合いですが普通の紬を想像していると少し異なります。真綿の優しさを残しつつ、ところどこにハリ感が残りサラッとしています。いやな硬質感というもは一切なくとても気持ちのいい生地です。

実はこの商品、一部に麻(手績みの苧麻)が使われていて緯糸に一定の間隔で織り込まれているのです。

手績みの苧麻糸を使う織物はお隣の宮古島(宮古上布)が有名ですが、多良間島にも麻織物文化があり、糸づくりも伝統的な方法で島のおばあが少しづつ糸づくりをしています。麻を交織する取り組みは他産地の商品にもみられますが、貴重な手績み苧麻糸をたくさん使えば価格も高くなり、風合いもどっちつかずになってしまいます。ちょっとしたアクセント程度に混ぜるのが最適な使い方といえるでしょう。

絹糸に混ざり下部の緯糸に異質な糸(手績み苧麻)があるのがわかる。

また麻を交織する以外にも別の工夫が見られます。

緯糸の紬糸を一本引き出してみました。毛羽立ちを防ぐため、1本の紬糸に対して2本の極細絹糸を絡ませていました。紬にありがちなガサガサ感がなく裾さばきが大変良さそうです。

紬糸を豊富に使っているのにも関わらず、真綿感が見事に抑えられたとても風合いの良いこの生地、まさに単衣向きの紬と言えるでしょう。

厳密には格子柄ですが、藍の縞が強く出るため遠目には縞柄に見えます。実は縞のピッチも一定ではなく、遊び心があります。

織物として魅力的な要素がたくさん詰まった「たらま紅紬」、今後も魅力的な商品入荷しましたら紹介したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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