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問屋の仕事場から

2017.09.12
大島紬の組織 ~一元式とカタス式~

十絣の比較

大島紬の最大の魅力は精緻な絣によるバリエーション豊かで美しい柄です。絣糸と絣糸の交差点が絣となって現れるわけですが、その交差点の作り方によって一元式とカタス式に分かれます。今回はその組織、特徴を解説します。

従来、大島紬の絣は経糸2本と緯糸2本を組み合わせて絣を作っていました。糸2本のことを一元(ヒトモト)といいます。一元で絣をつくると井桁に組み合わさりますが、織り子さんが糸を調節してがっちりと綺麗に組みあがった絣は風車(手裏剣とも)の形になり、一元絣といいます。

一方、経糸1本に対して、緯糸2本を組み合わせて絣を作ることもできます。キの字に絣糸が組み合わさりますが、織り子さんが調整してTの字に絣が浮き上がります。、本来の基本単位1元(糸2本)ですが、使用する経の絣糸は一本だけですので方数(カタス)といいます。これがカタス絣といわれるの由来です。

縦横の絣組織の比較

地糸の色が少し異なりますが、一元とカタスの生地を比較してみましょう。

絣の形状の比較

 

カタスの絣を一元と比較すると、どうしても薄っペらく感じてしまいます。素人目にみるとカタスのほうが絣自体が小さく見え精緻な印象を受けるかもしれません。しかし経絣が一本抜けている分、絣から伝わる力がどこか欠けて見えるのです。実際に絣を構成する面積自体が少なく、絣として浮いてきている黒い部分の面積比はカタスは一元の63%ほどにとどまっています。

一方、カタスは経の絣糸が少ない分、楽に織ることができます。カタスの交点は3ヵ所、一元は4か所です。楽に織れるということは正確に絣合せをしなくても済み、ある程度のごまかしがきくということです。一元の場合、絣がきれいに合わないと柄の粗雑さが目立ち、すぐに織(締めも含め)が上手か下手かが判別できてしまいます。絣合わせがうまくいっていないとどこか模様が歪んだ印象をうけ、一つ一つの絣の統一性がなくバラバラに見えてしまいます。下手をするとせっかく手間をかけて織り上げたものが難物判定を受け、B反扱いになってしまいます。

井桁絣の拡大

風車の形がキレイにできていない一元の絣、しっかりと絣合わせをしないと絣足がノイズとなって現れる。

従来は手間のかかる一元でしか織られていませんでしたが、カタスの手法が導入されると、あっという間にカタスの商品だらけになってしまいました。悪貨が良貨を駆逐するとまでは言い過ぎかもしれませんが、世の中に流通している大島紬で一元の商品を見つけることが困難なのです。

高度経済成長の時代にはとにかく商品量が求められました。問屋は商品を集めるために量産性の良いカタスを大量に発注、販売店に低コストで卸すようになりました。機屋も高コストをかけてリスクのある(難物になる可能性が高い)一元を作らなくなりました。

また、大島紬の織り子さんはほとんどが高齢者です。絣合わせをするのは目を酷使するためできるだけ少ないほうが負担が減ります。カタスを織るのに慣れた織り子さんは一元を織るのを嫌がり、技術的にも作ることが困難になってしまいました。

そして消費者は本当に良いものとは何かを忘れてしまったのです。

市松の絣の生地

一元の市松、パチッと力強く風車の形の一元絣が浮き上がる。

大島紬がいつの間にか一元からカタスになってしまったのは、織り工程が動力を使う織機になってしまった(鹿児島産地は大半が力織機による生産)以上のインパクトがあります。当初はカタス式の大島紬はニセモノであるという風潮もありましたが、大島紬自体の存続が危ぶまれる今となってはとてもそんなことは言ってられない状況です。

全国にたくさんの織物がありますが経絣2本(一元)で絣を構成しているのは本場大島紬ぐらいでしょう。まだ一部の高級品(本来からすると普通品ですが)が一元絣で作られています。やはり良いものは良い、大島紬を深く知り、こだわる方は一元の商品でしか大島紬と認めないというほどです。

絣本来の力強さを放つ一元の大島紬、是非一度手に取ってみてください。