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問屋の仕事場から

2020.04.16
愛すべき手仕事の布を使ったマスク 

もはやファッションアイテムと化したマスク、従来型の不織布タイプの品切れが続く中、個人単位でユニークな布マスクを自作する動きが出てきました。

一昔前までは不織布のマスクは一般的ではなく、マスクといえば布マスクがスタンダードなものでした。繰り返し洗って使える布マスクは経済的で、材料(布とゴム紐)さえ確保できれば、小学生でも作ることができます。防疫の観点からすると効果は限定的と言われてきましたが、ウイルスを含んだ飛沫を自らが拡散させない効果は無視できず、アベノマスクと称される布マスクが政府から全世帯に配布することになっています。

材料(布、紐)がなくともTシャツとハサミでマスクは作れる。CDCのHPより

対面の場ではマスク着用をしていないと白い目で見られ、「思いやりマスク」は日常生活において必要不可欠なものになったのです。マスクはもはや衛生具ではなく、フアッションアイテムと化したといって良いでしょう。

いずれ不織布のマスクの品切れや高騰は収まるでしょうが、ファッションに感度が高い人はマスクにもこだわりを求めます。服に合わせてカラーを変えるのをはじめ、様々な柄入りのマスクが登場しています。今までは変わり者扱いされていた柄物のマスクも市民権を得ているのです。

様々な布マスク、小池知事(右下)も可愛いと話題に。

マスクを常に着用していると、化粧をしなくても良いというメリットも聞かれ、マスク美人、伊達マスクといった言葉も出てきています。

これまで衛生具に縁のなかったタオル屋、ニット屋、下着屋まで糸へん業界総出でマスクを作り始めました。防疫効果はさておき、今回のコロナ騒動をきっかけにファッションアイテム、オシャレアイテムとしてのポジションを確立したといって良いでしょう。

 

コロナ鬱に寄り添ってくれる工芸織物

様々なこだわりの布マスクが登場する中、和装生地からマスク作る動きも出てきています。インスタグラムをはじめとするSNSではマスク姿をUPする方もいらっしゃり、マスクもコーディネートの重要なポイントとなっています。

各織物産地からも様々なマスクが発売され人気を博しています。

近江上布をルーツとする滋賀麻織物工業協同組合が開発した麻マスク 毎日新聞より

人目に触れ、常に本人の肌に触れるマスク、その生地が手仕事で作られた大好きな工芸織物であったらならば、なんと嬉しいことでしょう。

結城紬や越後上布のマスク、織物好きにとっては考えただけでもワクワクしてしまいます。

 

そして極め付けがこちら、なんと自然布の代表とも言えるシナ布のマスクです。

素晴らしいデザインのシナ布のマスク、WEBショップで購入することも可能。

縁は布で覆われていて、裏生地にも綿生地を使用しているので、肌触りも問題ありません。このような伝統工芸織物を使用したマスク、織物好きにとってたまらないものではないでしょうか。

 

人は引きこもってじっとしていると鬱になります。とっておきの生地でおしゃれマスクを作ることで気分を明るくしたいものです。

 

15センチのハギレがあれば

「布マスク、作り方」と検索すればいくらでも様々な布マスクの作り方が紹介されています。こちらのサイトでは図面をダウンロードしてそのまま(成人女性向け)A4縮尺で印刷、型紙として使うことができます。布マスクを作るには少しの面積さえあれば作ることができ、着物用の小幅(標準38センチ)あれば十分で、長さも15センチあれば表地を取ることが可能です。

※プリーツ型や平布タイプより、立体マスクの方が防疫効果があるとされています

手前は冒頭写真の紬の反物、奥は本麻近江ちぢみ。

一般的な着物の反物は3丈4尺≒12.8mあります。仕立て上がったとしても数十センチ、場合によっては一メートル以上も生地が余ることになります。あまり布を使って着物とお揃いのマスクを制作してみてはいかがでしょうか。

シルクの場合は洗えるの?という心配もありますが、シャンプーを使ってぬるま湯で手洗してしまえば問題ありません。縮緬などの強撚糸を使った素材以外であれば殆ど風合の変化もありません。紬などの平織りの丈夫な生地はマスクで使うレベルであれば、特別な神経を使う必要はないでしょう。

洗うことも可能な振袖柄の後染めタイプ。こちらはコロナ禍前から販売されているもの。

この状況下で商売あがったりの呉服屋さんでも布マスクの完成品はもちろん、ガーゼ、反物のハギレを売り出すところが出てきています。ハギレ(帳簿原価的にはゼロコスト)で作ったマスクは良心的な価格設定、着物にすると大変な金額になる商品でも、気軽に求めることができるのです。

コロナ不況で大量処分が予想されるレンタル着物。マスクにしても最新のインクジェット捺染は色落ちしない。

古着などを活用する手もありますが、アゾ規制に抵触する可能性があります。規制対象でない着物といえども口元に持ってくるものですから下着やハンカチに準じた扱いを受けることが予想されます。色落ちしにくい(目立たない)淡い色のものを選ぶ、規制対象のアゾ染料が含まれる可能性が高まる鮮烈色は避ける等の工夫が必要です。

安心な純植物染料の紬着尺、和装分野においては染料の規制は野放しである。

個人で使用する場合には本人の考え方次第ですが、商品化の際は思わぬ落とし穴(重大な違反には懲役1年以下、罰金30万円以下)があるかもしれませんので十分に気をつける必要がります。

 

極上紬生地のハギレ

今回のCOVID-19の蔓延が治まった後にも、常にwithポストコロナを意識した体制が敷かれることになります。マスクは個人の必須アイテムとなり、機能面、デザイン面で更なる進化を遂げることになるでしょう。いつの世でもこだわりの逸品が求められることは確かで、紬といった工芸織物の生地も選択肢に挙げられると思います。

やはり衛生具は白、そして加工の自由度の高い白生地をお求めの方、廣田紬には最高の紬の生地がストックしてあります。

こちらは過去に作っていた白生地のハギレです。無撚糸の紬糸を経緯共に100%使った諸紬、本場結城紬の条件を満たしていないので結城紬とは銘打っていませんが、その風合いは現在作られている結城紬も顔負けの極上のものです。

友禅染などの後加工用の白生地としてたくさん作っていた頃の生地のハギレですが、小物への加工用途としてまだまだ沢山あります。フワトロっとした最高の生地、直接肌に触れるぜひマスクでお使いいただければと思います。

仮に結城紬の白生地の反物ををつぶしてマスクを作るとなると、生地コストからすれば小売価格は1万円を超える超高級マスクになるでしょう。マスク向けに反物を少し切るとなると、在庫リスク(残った反物は短尺扱い)が高すぎますが、こちらは既にハギレになっていますので、要尺の分だけ極上紬をお求めいただくことができます。

型紙を互い違いに配置するなど、置き方を工夫すればハギレからでもかなりの数を取ることができる。

常に寄り添ってくれる手仕事の布、もちろんマスク生地以外にもお使いいただくこともできますし、これを機に愛すべき手仕事の布とは何か、再認識いただければ幸いです。

 

※あくまでもファッション生地としての提案で、マスクとしての防疫効果をうたうものではありません。

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