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問屋の仕事場から

2021.12.03
大島紬泥染めの危機がヤフートピックスに!

すでに大手新聞社の一面トップより影響力があるヤフートピックス(ヤフトピ)、11月28日未明から29日午前中までトップ記事一覧に大島紬に関する記事が掲載されていました。

ヤフトピに掲載されるニュースは政治、国際、芸能欄まで様々ですが、広告業であるヤフーは閲覧数を稼がねばいけませんから、それなりにニュースバリューのあるものが選択されます。

地方の織物産業にスポットが当たることは珍しく、大島紬の現状を知ってもらうまたとない機会だったと思います。

以下、南海日日新聞社の記事の一部切り抜き。

全盛期の1%台まで生産が落ち込んだ奄美の大島紬、一時は島の人口の大半の人が何らかの形で大島の製造従事者でしたが、後継者不足により様々な工程でボトルネックが生じています。

今回ニュースとなったのが染色材料であるテーチキ(車輪木)の不足。本土でも中央分離帯などの植え込みなどにも使われるなど特段珍しい木ではありません。ただ、染料として使うとなると成長した大量の原木が必要になり、山に入って切り出してこなければいけません。

成長したテーチ木の大きな幹、大量に集めてくるとなると素人の仕事ではない。

そして島唯一であった材木チップ工場が閉鎖となったことから、さらなるコストアップに拍車がかかります。工場閉鎖の理由としては木材の採取地が国立公園となり、手続きの煩雑さを嫌い引き上げてしまったようです。世界遺産登録や国定公園化で光が当たる一方、従来の商業活動に影響が出てしまいました。

生物の宝庫マングローブの森、手前は車輪梅の樹木。

大島紬の素晴らしい魅力の一つである泥染め、泥の印象が強くよく勘違いされますが泥は鉄の媒染剤であって、あくまでもテーチ木ベースの染色なのです。このテーチ木がなくして泥染めは成り立ちません。

チップになったテーチ木、破砕するのも大変。

人の手が入らなければ森は荒れてしまいますし、なんとか柔軟な措置でチップ工場を継続して欲しかったと思います。林業がしっかりと機能していれば頃は副産物として低コストで入手が可能でしたが、現在はコストをかけて切り出してもらうしかありません。

コスト高が避けられない染工程ですが、製品価格への転嫁を流通側は認めないといけません。

テーチ木のみで染色した布、泥染がなくとも自然由来の美しい色に染まる。

大島紬が全盛期の頃は大量のテーチ木を伐採したため、森の原木が不足、染料の状態で島外からの輸入が検討されたほどでした。今回は別の理由で染料の入手が困難になっていますが、仮に輸入という安易な手を使うとなれば消費者の反応はどうなるでしょうか。。。

島由来の自然染料を使うというストーリーが崩れ、ますます消費者離れに拍車がかかる気がします。

きめ細かな奄美の泥、島の養分が繊維の隅々まで行きわたる。

コストUPが市場に受け入れられるのは簡単ではありませんが、消費者も流通側も大島紬の現場が大変だという認識を持っています。

しっとりした泥染の大島紬の風合い、その独特の美しい艶、表に出にくい幾多の工程経て大島紬は作られています。全国に影響力のあるヤフトピへの掲載で少しでも危機感や現状が伝われば幸いです。

 

 

 

 

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