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問屋の仕事場から

2020.03.27
素人でもわかる紬と絣の違い

オシャレ着物に関心のない人であれば漢字を読むことすらできない「紬」と「絣」、業界関係者であっても言葉を混同して、はっきりと説明できない人が少なくありません。

以前にそれぞれについて詳しく「紬とは?」の項や、「絣を読み解くシリーズ」にてそれぞれのウンチクを解説していますが、今回は両者の違いをシンプルに説明します。

 

漢字の読み方

まずは漢字の読み方、紬(つむぎ)は漢字検定準一級、どれくらいの難易度かというと、同じ画数の漢字に梼(きりかぶ)や梧(あおぎり)などがあります。絣(かすり)に至っては一級に等級づけされており、両者はシンプルな漢字でありながら、いかに一般に使われていないかがわかります。

 

goo辞書より紬の漢字解説。近年は紬という名前が流行り、再び市民権を得つつある。

 

goo辞書より絣の漢字解説。音読みを「ホウ」と読むことは学者か漢字マニア以外知らないであろう。

 

 

紬と絣の違い

 

紬とは紬糸を使って織られた織物、生地のことをさします。絣は予め染め分けた糸(絣糸)で織られた柄のことをさします。

 

紬(つむぎ):生地のこと

絣(かすり):柄のこと

以上が紬と絣のシンプルな定義です。

 

紬と絣は同列に語られるものではなく、次元が異なる言葉なのです。

 

写真を見ながら解説します。

こちらは紬の織物、紬糸が使われていて、節が生地表面からポコポコと浮いていることがわかります。

結城紬の無地の表面。

そしてこちらは絣の織物、縦方向に絣糸(糸を染めわけた糸)が使われています。

松煙染めの絹織物、経糸がぼかしの絣糸となっている。

そして、こちらが紬の絣柄、ぽつぽつと節がある紬の生地に経絣、緯絣が走ります。

秦荘紬の絣柄。

以上、紬は生地のことで、絣は柄のことだと理解いただけたと思います。

昨今の世の中では「紬」という言葉を使い、オシャレ着物全般のことに一括りにしてすらいます。そこには当然絣織物も全て含まれていて、少々ナンセンスではありますが、そのほうが楽で分かりやすいという消費者ニーズを捉えているともいえるでしょう。

 

大島紬は?

大島紬は精緻な柄が特徴の絣織物です。「紬」とは名乗っているものの、基本的に経緯とも平滑な絹糸で織られます。久留米絣のように大島絣と呼称を変更すると消費者にも分かりやすいのですが、なぜ紬織物でないのに堂々と紬を呼称しているのでしょうか。

それは昔に紬糸で織られていた時代に「奄美」大島紬と名前を付けたからです。絹糸で織られるようになったからといって、一度定着したブランドはそう簡単に変更することはできません。

昔は紬糸が使われていたため、紬の名前が使われている大島紬。

置賜紬(紬糸を使わない商品もある)や琉球絣(絣を使わないこともある)にも言えることで、ネーミングと素材、技法の不一致が消費者の混乱を招く一因となっています。

本当の分類としては紬織物や絣織物ではないものも、紬≒絣=「おしゃれ着物」としている現在の感覚からすれば、そんなウンチクはどうでもよいことかもしれません。

ルバースミヤヒラ吟子さんの首里花織。紬でも絣でもない織物はたくさんある。

以上、

紬(つむぎ):生地のこと

絣(かすり):柄のこと

紬と絣は別ものであるという、基本のキを知っていただけたら幸いです。

 

 

 

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