こちらでは前項で紹介した大島紬の高解像度のオリジナル画像をダ…
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問屋の仕事場から
- 2019.06.10
- 進化するモダンな龍郷柄
龍郷柄(たつごうがら)といえば大島紬を代表する伝統柄として知られています。奄美大島の自然の恵み、ソテツの葉とハブの背の鱗模様を意匠化したもので、その名前は大島紬の一大産地である奄美大島の龍郷町に由来しています。
その大胆なデザインは一度見たら忘れられない斬新な印象を植えつけます。
他産地にはない(技術的にも再現困難)な独特なデザインで、奄美大島ならではの自然を意匠化した唯一無二なものです。
経絣糸と緯絣糸を2本づつ引きそろえて垂直に組み合わせ並べると、矢羽のようなソテツの葉の並びになります。主に女性用の柄として使われ、菱紋(ハブの背の模様)の中に赤や青のカラーアクセントが入ります。
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ソテツの葉、鉄分を豊富に含むソテツ(蘇鉄)は泥大島の媒染剤としても使われる。
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矢羽のような蘇鉄の葉の並びを絣で表現、菱紋の中にレッドカラーが映える。
色が入ると少々きついイメージになることもありますので、色を入れない商品展開もされています。
こちらの柄は色を入れない商品、お約束のソテツの葉模様と南国に咲く花をイメージしたデザインになっています。

淡彩になることでグッと引き締まる印象になる。
奄美の自然を意匠化した伝統の龍郷柄、様々な織元が工夫をデザインに工夫を重ねて様々なパターンが作られてきました。
実は従来(泥染の大島紬)の龍郷柄は経糸の本数が少なく、13算(1算が経糸80本ですので1040本)で作られています。15.5算(経糸1240本)の商品と比べて地風がどこか薄くざらっとしています。良くも悪くも薄いのが特徴の龍郷柄、15.5算の織り密度の高い商品がないのは残念ですが、従来の泥染以外では15.5算の商品も開発されています。
こちらは白大島の龍郷柄、俗に白龍郷と呼ばれているものです。

ありそうでなかった龍郷柄の白大島、開発されたのは平成に入ってのことである。
デザインは素晴らしい龍郷柄でしたが13.5算ではなんとなく廉価品の扱いを受けてしまいます。白大島の龍郷柄は15.5算で作られており、しっかりとした地風で単衣でも安心して着ることができ、大島紬の名に恥じない高級感を備えています。
こちらは1玉(反物巾に1パターンの柄が入る)の大胆なデザイン、幾何学の丸紋は勲章を意匠化した物です。
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雪輪に幾何学模様の組み合わせが鏡裏紋のような美しい柄を作り出す。
また、龍郷柄は大柄の商品が多いのですが細かく敷き詰めることで随分モダンな印象になります。
そしてこだわりの泥藍染の龍郷柄、
独特の菱紋の配置が美しく、龍郷柄にしてはずいぶんあかぬけた印象です。泥染の色味に比べると絣のコントラストが幾分ハッキリとしている気がします。
さらに進化した柄がこちら、
すでにソテツの葉やハブのウロコ模様を連想させる箇所は存在しません。龍郷柄の面影が残るだけでもはや別物と言えますが、龍郷柄がなければこのデザインは生まれなかったでしょう。
この秀逸なデザイン、白大島バージョンの展開もあります。
ソテツやハブのウロコ模様を意匠化した龍郷柄は確かに斬新ではありますが、伝統を意識しすぎてどこか野暮ったく見えることもあります。一方、トレンドを汲み取りしっかりと進化を遂げるアカぬけた柄も存在するのです。
100年以上の歴史を持つ龍郷柄、従来の伝統柄を守りつつも着実に進化しています。消費者ニーズを捉えつつ伝統を残していく龍郷柄、これからの進化が楽しみです。
番外編
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名刺ケース、斬新な柄は初めて見た人に強い印象を植え付ける。
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デザインが引用されたシャツ、化学繊維の織り柄。@奄美のディスカウントストア
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超広幅で織られた暖簾。@奄美パーク