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問屋の仕事場から

2018.10.08
風合いが増す砧打ち

織物づくりの仕上げとして砧打ちとよばれる工程があります。織り上がった布を槌で叩くことで組織同士がなじみ風合いが増すのです。廣田紬では織りあがった商品の風合いを増すために社内で砧打ちをすることがあります。

砧(きぬた)の語源は衣板(きぬいた)にあると言われ、布を板の上でたたく行為を言います。

織りあがった反物が入荷すると、専門業者に依頼して湯通しを行います。糸に付着していた糊を落とすことで織物本来の風合いになりますが、どうも今一つと思われる場合があります。糸質や打ち込みなど何らかの原因で硬めの仕上がりになってしまうのですが、砧打ちをすることでこわばった繊維がほぐれて真綿独特のフワッとした風合いを取り戻すことができます。

砧台と砧、廣田紬の社員のだれよりも先輩である。

まず木のアクが織物に移らないように作業台を布で覆います。宮古上布などの麻物は繊維を潰すことで艶を出すため直接生地を叩きますが、繊維自身を痛めかねないため生地を幾重にも重ねたうえで厚い当て布をします。余計な力を込めずに槌の自重任せにして、打ち反ってきた反動を利用してリズムよく叩くのがコツです。根気よく満遍なく打ち降ろすことで硬かった風合いは徐々に柔らかくなります。

反物を折り重ねてリズムよく叩く。

本職には及ばないものの、様々な織物に精通した40年以上のキャリアは素人レベルではありません。目的とする風合いになるよう、黙々と槌を打ち続けます。東洞院通りにゴンゴンゴンと鈍い砧打ちの音が響きます。仕上げは糸叩きならぬ生地叩き、バサバサッと反物を震わせるようにほぐし叩きます。

槌がうまく布に当たるような理想的な曲率を求めたところ酒瓶を使用することもあります。

ほぼ同じ大きさの酒瓶、砧打ちならぬドンペリ打ち・・・

手間がかかる砧打ちですが、実は昔はどこの家庭でも行われていたことです。柔軟剤など便利なものが登場するはるか前の江戸時代、洗濯すると衣服はどうしても固くなるので、女性が砧を打つことで柔軟仕上げ、シワ伸ばしをしていたのです。冒頭の浮世絵にもみられるように湯通しした織物の仕上げも当たり前のように行っていたのでしょう。どこか淋しさを誘う「砧」の作業は秋の季語にもなっています。

 

風合いを増す砧打ち、昔は各産地でも行われていたことですが、コスト優先で作られる商品にはなかなかそこまでの手間をかけることはできません。少しでも理想の風合いに近づけるために廣田紬では地道な取り組みを行っています。

 

 

 

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