琉球絣は様々な素材、糸質、織技法を駆使して独自の発展を遂げて…
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問屋の仕事場から
- 2018.05.15
- 絹糸を使う白たか上布
上布といえば麻を材料にした上等な布という意味で、越後上布をはじめとして様々な織物が日本各地で作られてきました。無条件に麻を使った織物かというと例外もあります。今回は素材に絹を使った白たか上布の紹介です。
置賜地方では上杉鷹山の藩政改革により養蚕を奨励したことから絹織物の技術が発達しました。麻畑が徐々に桑畑へ変り、麻織物の産地は半世紀ほどを経て絹織物の一大産地へ様変わりします。
麻織物の良さを知っていた先人は絹織物で麻の質感を再現できないかと独自の改良を重ねました。そして出来上がったのが麻のようなシャリ感を持つ絹糸の上布です。
他の産地でも麻のような質感を持たせた絹織物を「絹上布」ということがありますが、白たか上布という名前自体は織り元が付けた登録商標になります。
シャリッとした質感は一見麻のような手触りですが、どこか絹の手触りの良さもあわせもちます。
生地を拡大してみると経緯糸共に双糸を使っていることがわかります。緯糸は琉球の壁上布に使われるカベ糸のような絡み糸にも見え、独自の撚糸技術が使われているようです。肌に馴染むシャリ感になっているのはこの絶妙な組み合わせによるものでしょう。
絹糸を使いながらもそのシャリ感はまさに上布、さらに優しく肌に馴染む絹の特性を併せ持ちます。夏の着物はメンテナンスのことを考えれば麻が適していますが、やはり人は絹を恋うものなのかもしれません。白たか上布は麻のきものを敬遠しがちな人にぴったりな選択肢と言えるでしょう。