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問屋の仕事場から

2018.02.23
糸の芯まで染めるトップ染 霞模様の紬

十日町から霞模様が美しい紬が織りあがってきました。彩度の異なる同系色の糸をランダムに組み合わせた美しいグラデーションの着尺です。

 

節糸を多く含む緯糸は立体感のある霞模様を作り出します。一定の間隔で横段になっていますので、仕立て合わせると絵羽模様になります。

先染めの織物であることは確かですが、トップ染めと呼ばれる染色技法の糸が使われています。

伝統的工芸織物に使われる先染めの糸は一般的に綛糸を直接染料にドブ漬して染められます。一方、トップ染めは糸になる前の原料である綿の状態で染められます。綿の状態で染められた糸は芯まで深く染まり美しい染め上がりになります。染めの影響で糸質が変化することがありません。

またほかの色と混紡することでメランジ(仏:mélange 混合の意)とも呼ばれれる「霜降り糸」を作り出すこともでき、異なった雰囲気のグラデーションを演出することができます。

この商品に使われている糸は単色で染められ、グラデーションの中にある程度コントラストを残すデザインとなっています。

生地を拡大してみます。節糸を多く含む糸は豊かな生地感を演出しています。

トップ染は糸の繊維の芯まで染料が浸透しているため、深みのあるコントラストが得られます。こすれたりしても糸の表面が擦り切れるだけで、繊維の色が変わることがありません。

多彩なカラーバリエーション展開、近似色を織り交ぜ色彩豊かに仕上げてあります。

紡績処理で作り出されるトップ染紬糸

綿から染めたのがトップ染めですが、現在では真綿から染めることも少なくなりました。実はこの商品のトップ染はスライバーと呼ばれる紡績過程の綿が染められています。そして紡績で作られた紬糸で織られているのです。

真綿から紡ぎ出した紬糸(つむぎいと)ではなく絹紡紬糸(ちゅうし)と呼ばれる糸です。一旦繊維をクラッシュ、繊維の方向を揃え撚り合わせ糸にしています。紬糸や生糸はカイコが吐いた糸をそのまま束ねて糸にしてるため長繊維になりますが、一旦細かく裁断された紡績糸は短繊維に分類されます。

機械紡績で大量に作られた糸を使い自動機械で織り上げるため、手間のかかる先染め織物としては非常にリーズナブルな価格を実現することができるのです。

※一部には真綿から染めたグラデーション豊かなトップ染糸も存在します。

紡績処理は様々な段階を経て行われる。分子レベルではすべて同じシルクであるが、形状レベルでは別物である。

機械紡績の廉価な糸(近年は紬糸に迫る糸種もあります)だからといって侮ってはいけません。シルク100%には間違いなく、しっかりと絹の特性を備えています。そして絹紡糸の風合いは悪いものというわけではなく、新しいテイストと捉えれることもできます。

糸の芯までしっかり染まるトップ染、従来の紬糸ではなしえない新しい色彩を与えてくれたのです。

 

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