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問屋の仕事場から
- 2024.03.10
- 結城紬「長尺」とは?
結城紬には様々な証紙が貼られていますが、中には「長尺」と記載のある金色のシールが貼られていることがあります。どういった意味ですかという質問をいただきましたので解説していきます。
女性用の一般的な着物を作ることができる反物の長さは、3丈3尺ほどあれば大抵の身長の方に対応できます。反物1反の長さは、3丈3尺(約12.5m)以上あることが基本で、各産地の検査基準も1反あたりの長さが3丈3尺前後以上あることが条件に設定されています。
一方、後染めで様々な加工が入ることが前提の丹後ちりめんなどの白生地の場合、3丈3尺では心許無く3丈4尺〜5尺程が基本の長さとなります。さらに3丈6尺が必要なケースもあり、特別に長く織る場合はこれを「長尺」として別誂することにあります。
織物においても仕立てた時に柄合わせが必要な生地は3丈6尺以上と長めに織られていることが多いです。
結城紬の長尺は特段に長いわけではない
さて、結城紬の長尺表記ですが、一般に長尺と言われる3丈6尺程度あるのでしょうか。
実はそんなことはなく、検査時に3丈4尺あればシールが貼られるのです。
さらに機から下ろして織り上がった時点での検査ですので、流通にのって消費者に売れる頃には3丈4尺を切っている(※結城紬は徐々に縮みます)ことが十分に予見されます。なので長尺という表記があるからといって白生地のように3丈6尺あることをイメージしてはいけません。
今回の商品(結城紬縮織)は横段のデザインになっていて、柄合わせを行うとなるとある程度余裕が必要です。仕立ての際には長いに越したことはないのですが、高身長女性の場合はなかなか柄合わせのパターンが限定的になってしまうかもしれません。
なぜ、わざわざ長尺(3丈6尺以上)を期待させるシールが貼られているのでしょうか。それには結城紬独自の事情がありそうです。
ひと昔前、日本人女性の平均身長が150センチを切っていた頃は3丈2尺もあれば十分で、3丈4尺もあればかなり長かったわけです。いまでもシンボル的な意味合いで貼られている卸組合の証紙には12m(3丈1尺7寸)と記載があります。
ちなみに長尺でおられている商品の割合は7%程度(令和5年実績)とかなり貴重なものになります。
以上、結城紬の長尺「3丈4尺」は他の織物で言えば特段長いわけではありませんが、結城紬の”悠久”の歴史的には十分に長尺扱いということだったのです。
現代においては少々誤解を招く表記ですが、実際に高身長な方やモデル体型で本当の長尺(3丈6尺)が必要な場合は別誂する以外ありません。生産設備の関係で規格外となってしまうのですが、廣田紬では別誂対応もいたしますのでお問い合わせください。