大島紬は柄自体はとても精緻なものですがワンパターンの繰り返し…
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問屋の仕事場から
- 2017.09.21
- 大島紬の柄 繰り返しパターン考察(初級編)
多彩な柄が魅力的な大島紬、古典模様だけではなく様々なデザインが試されています。これだけ精緻な柄をうまく作れるのは「締機」という大島紬独自の絣作りの手法にあります。一度に大量に絣作りをすることから量産効果が発揮できる一方、柄がワンパターンの繰り返しになってしまいます。今回はこの繰り返し柄について考えてみます。
締機についてはここでは詳しく説明しませんが、組合のページに説明動画がありますので参考にしてください。写真の大島紬、色紙散しと呼ばれる典型柄ですが、一見どのような繰り返しになっているかわかりません。
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7マルキ一元絣、重ねた色紙の絣色を少し変化させることで浮き立たせている。
実際に着物に仕立てて帯を締めてしまうとさらに分かりにくいでしょう。この繰り返しがわかりにくいようにデザインするのが図案担当の腕の見せ所です。どのように繰り返しになっているか、柄を区切って分解してみます。
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緑の枠が元図案、反転合成して1を作っている。
1の次に続く2は上下反転しています。3は2の上下反転となっており、その繰り返しです。図案は1種類、絣糸づくりも繰り返し分を作るだけで済みます。締機を使うことで同じ絣糸を一度にまとめて大量に作ることができます。柄と柄が短い距離で連続するほど、絣糸づくりは効率的にできるということです。また、亀甲絣のような連続柄は小さい範囲の同じ絣の繰り返しなので、絣作りの手間だけでいえば非常に効率的だということがいえるでしょう。
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複雑に見えるベタ亀甲でも絣糸づくりは効率的に行われている。左右上下対称の麻型なども同様。
締機を使って絣を作ると構造的に柄が上下反転してしまいます。Nの次(下)はИになり、次も反転してN、И、N、И・・・と続きます。今回のように上下に区別を要しない柄や、抽象柄の場合は問題ないのですが、自然風景や構築物などの柄では重力に逆らうおかしな構図になってしまいます。それを解決したのが「袋締め」です。この手法で絣を作ると、柄が反転しない一方付の柄にすることができます。
一例を見てみましょう。

流水に流れる花模様を表したカタス9マルキの泥大島
締機で絣を作ると、その構造的な仕組みから繰り返される柄は上下反転の繰り返しになりますが、この商品はそうなることなく同じ柄がずっと続いています。柄がどこで繰り返しになっているか分解してみます。
上下反転の問題をクリアした袋締めですが、締める際には綜絖を増やしたりと手間を要しますので、コスト高になってしまいます。また、せっかく一方付にしても肩の部分で折り返されてしまいますので、前身頃ではきれいにAAAAと繰り返されていても後ろ身頃で∀∀∀∀となってしまいます。これをクリアするには絵羽に仕立てられるように調整する必要があり、そのためだけに絣作りを調整する必要が出てきます。大島紬の絵羽はまた別項で解説したいとおもいます。
中級編では繰り返しパターンを分かりにくくするため工夫したデザインを紐解いていきます。
続きはこちら。
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清水の舞台の柄、天地が逆になってしまいどこか違和感が残ってしまう。

一方付の例、この面では鳥の頭がすべて同じ方向を向いている。

こちらは猫の柄、花鳥図の場合は不自然さは薄まるが、この場合はそうはいかない。
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建物が反転していない柄、繰り返し柄であるがしっかりと地についている。