越後上布(重要無形文化財)といえば、そのあまりにも手間がかか…
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問屋の仕事場から
- 2021.01.31
- 【コスパ最高】浴衣を卒業したら無地の小千谷ちぢみ
夏の麻織物の代名詞と言っても過言では無い小千谷ちぢみ、大人の女性であれば一着は持っておきたい夏着物です。
夏祭りなどで見かける浴衣、花柄などの小紋柄が主流です。
近年の浴衣はピンクや紫の派手な色使いがトレンドですし、男性向けでもでも思い切った大柄の商品が増えてきました。
多くはインクジェットのプリントの仕立て上がり品、大変リーズナブルに手にすることができます。さらに現在においてはレンタルが主流といってもよいでしょう。数千円の出費でメンテナンスや保管コストがかからないレンタルは現代のライフスタイルに合った最適解です。
レンタルが主流となった今、浴衣を誂えようという方はなかなかの「こだわり派」といえるでしょう。仕立て代の方がプレタ浴衣より高い時代です。浴衣メーカーもオシャレさんの目にかなう高価格帯のラインナップを拡充しています。
しかし浴衣は元の由来がその名の通り、湯上りに纏うものでした。夏祭りに着ていくものは、さすがに旅館で貸してくれるレベルのものとは着こなしも違いますし、ここ最近では日中に着用することにも市民権を得てきていました。
しかし眉を顰める方も多くいらっしゃるのも事実です。どれだけ高級な浴衣でもパジャマ、Tシャツ+短パンレベルの格とみなされますのでTPOを気にしておかねばいけません。
浴衣は着装も比較的容易ですし、着物を好きなる最初のきっかけとなった方も多いのではないでしょうか。急にフォーマル着物にチャレンジするのは少々手間ですし、次のステップとしてオススメなのは夏着物です。
浴衣は卒業して夏着物へ
肌着感覚の浴衣とは違い、夏着物(着物の下に長襦袢を着る襟付きスタイル)であれば日中でも堂々と歩くことができますし、ちょっとしたレストランにも気兼ねなく入ることができます。
生地の素材は織り(先染め)の着物のバリエーションが増えてきます。絣を駆使した柄物もよいですが、お勧めしたいのははやり定番の「小千谷ちぢみ」です。
小千谷ちぢみは江戸時代から続く、新潟県の小千谷地方で作られる麻100%の着物生地です。昔と一切変わらない重要無形文化財の技法で作られたもの(高級車が買える値段です)や、伝統的な技法で作られたもの、効率を重視して工業的に作られたもの、様々な商品が展開されています。
今回紹介するのはその中でも一番リーズナブルな無地の機械製織の無地の商品です。
コスパ最高の小千谷ちぢみ無地
コスパ(コストパフォーマンス:対費用効果)が最高とは無粋な売り文句ですが、着物カテゴリにおいてはこの小千谷ちぢみのためにある言葉といっても過言ではありません。
「仕立て上がり10万円以下で一生使える着物」
なかなかこの条件にあてはまる商品も少ないのでないかと思います。
麻のちぢみ生地の素晴らしさは別項で解説していますが、そのメリットをリーズナブルに享受できるのは先人の知恵はもちろんですが、文明の利器ともいえる生産技術の発達にあります。
夏の定番キモノとして定着した小千谷ちぢみ、生産量もそれなり(呉服商材としては)の数がつくられます。
工業製品のコストダウンは数が物を言います。糸の手配コスト、染め賃、機に糸を載せる段取り工賃、数が多ければ多いほど、一点当たりのコストは下がります。また、小千谷縮は高速で織り進めることができる自動織機によって作られています。一人のオペレーターが複数の機械を制御、その生産効率は一般的な手織り機の数十倍です。
しかし安かろう悪かろうではなく、生地の品質に一切妥協をしていないのが小千谷ちぢみのプライドです。
糸は高品質の苧麻紡績糸(TOSCO製オーガニックラミー)を100%使用、綿などを混紡することなく麻100%を貫いています。さらにコンニャク糊で毛羽立ちを抑える加工(化学糊より加工費が高額)も施され、麻のチクチク感を抑えています。
そして機械制御による製織はムラのない均質な生地を生み出しますが、熟達の職人によってシボが付加されることでランダムな仕上がりを演出してくれます。
うれしいことに麻は摩耗や経年劣化に強く、無地柄であればずっと飽きずに使い続けることができます。
一口に無地といっても生地には実は様々な工夫がされています。先ほどから掲載している紫の無地の商品、生地を拡大してみると実は3色の糸を使っていることがわかります。
なかなか見えないところにこそ、発色にこだわる織元の工夫がみられます。
カラーバリエーションも豊富で、他では選べなかった好みの色がきっと見つかるはずです。
コスパ最高の無地の小千谷ちぢみ、浴衣を卒業して夏着物として誂えてみてはいかがでしょうか。廣田紬では様々なバリエーションの小千谷ちぢみを取り揃えております。