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問屋の仕事場から

2021.02.04
労ってやりたい反物の耳、札付けは丁寧に

商品に値札などを付ける際に使用するタグガン、出来るだけ細い芯を使うことで生地の傷みを最小限に抑えることができます。

廣田紬で扱う各種反物には商品番号等が記載された越後札が付けられています。越後札は紙を細く縒って作る紙縒(コヨリ)で作られていて、現在は専門のお店に委託して作ってもらっていますが、大昔は社内でも暇を見て社員が作っていました。現在は専門のお店に委託して作ってもらっていますが、大昔は社内でも暇を見て社員が作っていました。

コヨリでできた廣田紬の越後札、内職さんによって作られている。

昔は越後札を作る業者がたくさんありましたが、数える程になってしまいました。ついこの間も長年頼んでいたサイズが製造終了してしまい、古き良き呉服市場を支えていたインフラが少しづつ失われて行くのを感じます。

合間をみて自作する渋札、うまくコヨリを作るのはコツが必要。

越後札は先が尖っているので目地の隙間を狙って通すことができます。コヨリの先を回転させながらねじ込むように、生地の隙間を通すのです。

越後札の先端は針のように細くても、根本は太さがありますので生地に小さな穴が開くことになります。

越後札の後、小さなピンホールが形成されている。

実際に穴と言っても、目地の隙間を狙って通していますので糸が切れている状態ではありません。生地を柔軟体操してやればすぐに元に戻すことができます。紬生地は糸が太く、密度もざっくりと粗いので、越後札を付ける際に目視で隙間を狙うことができるのです。

越後札が通った後、穴というよりかは組織が偏って隙間が広がったイメージ。

しかし縮緬生地などの細く繊細で密度の高い生地や、札を刺したところに長年負荷がかかったりすると繊維が切れてしまうこともあります。

できるだけ生地の耳を労ってやるために慎重に取り扱いたいものです。

 

穴を最小限にする細針タグガン

販売店様の展示会ではに小売価格が表記された値札を付けることがあります。タグガンと呼ばれるタグ札を付ける機械で「ガチャン」と打てば値札や商品タグを一発で簡単に付けることができます。たくさんの商品を出品する大型催事ではこのタグガンは不可欠なアイテムです。

ピストル型のタグ付け装置、通称タグガン

タグガンで値札を付ける際のイメージ。ガチャンと一発でタグと商品を連結することができる。

また、商品にブランドタグなどを付ける際にもタグガンは使われます。

タグピンで連結されたタグ札、生地にピンホールが空いている。

越後札で穴を開けるのと異なり、穴を開けた針の内径を通ってタグピンが生地に通ります。そのため穴を開ける針がどうしても太くなってしまいます。商品が痛まないように可能な限り目地の隙間を狙って針を刺すようにしていますが、販売店様で作業される場合はどのように作業されているか管理ができません。

何度も札を付け替えすることで反物の耳も傷んでゆきます。さまざまな催事会場を転戦した歴戦の商品は「耳やぶれ品」として訳あり商品扱い(仕立てには影響がないにもかかわらず)となってしまうこともあるのです。

構造上どうしても大きめの穴が開いてしまう。

可能な限り生地へのダメージを減らすためには細い針のタグガンを使う必要があります。タグガンの針は直径Φ2mm弱のものが主流ですが、デリケート商品むけに細針タイプも用意されています。一番細いものはΦ1.2mmの商品もあるようですが、針が短すぎる上、使用するピンも特殊品になってしまい呉服流通の現場では実用的ではありません。

細針タイプのタグガン、ニードルの直径が1.5mmm、長さも適度で作業がしやすい。

廣田紬で使用しているのはエスジー工業製のΦ1.5mm程度のロング針仕様のもの、針が長いので札付け作業もテンポ良く行うことができ、打ち損ないもありません。

タグメイト 2200XL ロング細針機(楽天市場の商品ページへ飛びます)

安価な海外製品も出回っていますが、壊れやすく信頼性がありません。タグ付け作業の途中でタグガンが壊れてしまって商品の出荷が間に合わないなど、目も当てられない事態は絶対に避ける意味でも安心の日本製をおすすめしておきます。

どうしても生地に穴を開けざるをえないデリケートな生地には、細針タイプのタグガンの使用は必須です。反物の端の部分は仕立てに影響がないにしろ、商品の顔でもありますので、できるだけ生地を労ってやりたいものです。

以上、今回は呉服札、タグガンについてのお話でした。

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