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問屋の仕事場から
- 2017.09.26
- カジュアルレンタル着物の意義
昔はどの家庭でも一式そろえてあった着物ですが、今やレンタルというのが一般的になりました。近年は街歩き用のカジュアル街歩き用のカジュアル、お洒落着物が目立ちます。観光客向けに広く展開されていて、普段町で着物を見る機会というとこちらが多い印象すら受けます。ちょっとしたブーム言ってもよいでしょう。今回はこのカジュアルレンタル着物の意義について考えたいと思います。
レンタル着物は多彩な柄に加え、素材も木綿の浴衣をはじめ、化繊、正絹着物とバリエーションも豊かです。安いところだと3000円ほどでレンタルできるのですから価格の面でも気軽にチャレンジすることができます。なによりも着物が忌避される原因である面倒な着付(着るのに手順を覚える必要があり、必要な小物類が多い)、メンテナンス、保管が不要です。モノよりもコトを重視する世代のハートを捉え、一時的な流行ではなくその勢いは拡大、ブームどころかもはや定番化している状況なのです。
京都では着物が観光客の街歩きスタイルとして定着している一方、安価なレンタル着物を冷ややかな目で見る人も多いのが事実です。生地がペラペラであるとか、着こなし着付がなっていない、ひどく幼稚な柄、目が回るようなあり得ない色使いだ、着物ではなく興味本位のコスプレだとか・・・どうしても厳しいプロの目線で見てしまう業界関係者が多いせいもあるかもしれません。正統派を称する自社商品が売れなくなった恨み節にも聞こえてきます。
レンタル着物のせいで従来の着物スタイルが脅かされ、業界を圧迫しているのでしょうか。決してそうではないと思います。よく考えてみると、この非常に安価で気軽に使えるレンタル着物のシステムがなければ若者はが普段着物にふれる機会はないといっていいでしょう。現在の若者の親世代も着物についてよくわからない状況、すでに若者にとって身近でない「キモノ」は得体の知れないものになりつつあります。
しかし若者の着物を着たいという願望は各種アンケートからも明らかです。着物を着たいが得体の知れない物で不安がある。それを一発で解決してくれたのがレンタル着物です。価格の不安、着付、保管やメンテナンスの問題をすべてをクリア、外国人も含め大きく門戸が開かれたのです。そこで初めて着物を着た人はどう感想をもつでしょうか。
① 着物が好き、調べて購入してみたい
② 着物が好き、レンタルで十分なのでまた着てみたい
③ 期待外れ、もう着ない
着物に好感を得てもすぐに実際に購入したいという人は少ないと思います。しかし②を繰り返すうちに所有欲が湧いてきて①の考えに至る人もいます。現在はWEBで様々な情報を得ることができますので、一定の知識を得て値頃な商品を取り揃えているお店にたどり着くのは簡単でしょう。そしていろいろと買い求めていくうちに、目が肥えてきて良いものがわかってきます。結果として広くマーケットを潤してくれるようになるのです。
とにかくキモノ体験という接点のおかげで若者がカジュアル着物を気軽に着れる機会を得、裾野を大きく広げてくれたといってよいでしょう。ハレの日だけではなく、普段着としての着物。徐々に萎んでいくマーケットを新しい切り口で開いてくれたカジュアルレンタル着物、恨み節や冷ややかな目で見ずに更なる発展を祈りたいと思います。