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問屋の仕事場から
- 2019.07.09
- 着物を際立たせる朱塗りの衣桁
着物の陳列に使われる衣桁(イコウ)、廣田紬では紬の陳列に特化した別誂えの朱塗りのタイプが半世紀以上も使われ続けています。
今日においては衣桁は呉服屋さんの陳列道具になってしまいましたが、昔は一般の家庭にも普段使いの家具として一つや二つはあったものです。着物をかける「ハンガー」として使われていたわけですが、畳文化自体が危ぶまれる現在では「それなり」のお家でない限り見かけることはありません。
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店外催事で使われる標準タイプのレンタル衣桁、紬と金属加工された装飾がどこかミスマッチ。
鳥居のような形状の衣桁、現在では安価で扱いが楽な樹脂製のタイプが主流になっています。昔は竹が使われていたことがありましたが、虫食い等で粉を吹いたりするためめっきりと少なくなりました。上等なタイプですと木材に漆をかけ、棹の角の部分には金彩で装飾したりします。
華やかな振袖などをかけておけば、色彩に乏しい和室を彩るインテリアとしてしても映えますし、この家ではしっかりと和文化が生きていますよというアイコンとして活躍してくれるはずです。美しい着物を飾る衣桁、一生涯にわたって活躍してくれる重要なアイテムですので少しこだわってみてはいかがでしょうか。
そんな中、廣田紬では朱塗りの衣桁が使われています。これは神具や神輿なども手掛ける宮大工さんにお願いして誂えた特別なもので、朱に塗られた衣桁はまさに赤鳥居のように見えます。そして天井の低い京町家とのバランスを考慮して少し低めに作られています。
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月初の展示会の様子、黒い衣桁だとどうしても暗い雰囲気になってしまう。
紬は振袖や訪問着のように絵羽の状態で展示することは少なく、反物の状態でそのまま吊り下げます。落ち着いた京町家のしつらえに、地味な色味が多い紬の商品群だとどうしても雰囲気が暗くなってしまいます。軸物やお花などで会場に色彩を加えるのですが、さらに朱色の衣桁があることで明るい雰囲気の醸成に一役買っています。
そして朱赤は意外にもおめでたい礼装(振袖や打掛等)にマッチします。
廣田紬の社屋を利用した貸会場においては呉服の展示会場としてもお使いいただいており、既製品の黒いタイプの衣桁も用意がございます。しかしほとんどの方があえて朱塗りの衣桁を選択されていますので、少数派の朱塗りの衣桁も捨てたものではないのです。
廣田紬ならではの朱塗りの衣桁、すでに半世紀以上の期間にわたって使われています。
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塗装傷の修復中、さながら伏見稲荷の千本鳥居に見える。
長年の使用で多少の歪みや、漆の剥がれも散見されます。昨今の軽量で扱いが楽な樹脂タイプでも十分に機能は満たしますが、大切に修復しながら次の一世紀を見越して使っていきたいと思います。
以上、今回は普段クローズアップされることのない衣桁について取り上げました。珍しい朱の衣桁はそれなりに需要はあるようで、通販などでも販売されているようです。鮮やかに映える朱の衣桁検討されてみてはいかがでしょうか。