全国各地の様々な紬織物、それぞれの夏バージョンが存在していま…
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問屋の仕事場から
- 2020.08.12
- 猛暑日においては注意が必要な接触冷感生地
35度を超える猛暑日が続く8月、外出時にマスク着用など考えたくない状況です。世の中には様々な夏用マスクが販売されていますが、接触冷感機能を持っただけの生地だと、逆に暑苦しく感じることがあります。今回は接触冷感マスクの落とし穴について考えてみます。
接触冷感生地とは生地に肌が触れたときに、肌の熱が生地に移りヒヤッとする生地のことです。接触冷感の具合を定量的表した数値にQ-max値がありますが、これは熱伝導性が高い素材ほど高い傾向にあります。一般的に0.2が冷感生地の目安とされ、化学繊維で作られたものの中には0.5を超える冷感生地も出てきています。
Q-max値が高ければ真夏でも涼しいと考えるのは早計で、一度ヒヤッと感じた後は生地に熱が移ってしまうので風の通りが悪いと熱がこもってしまい、素材の性質によってはジメジメして暑苦しいと逆効果になります。接触冷感の敷きパットなどで就寝中、汗を描いて気持ち悪さで目覚めた経験がある方もおられるのではないでしょうか。
冷感生地には単なる接触冷感機能だけではなく、汗などで濡れたりしたときの速乾性、蒸らさずに空気の循環を素早く行う通気性が同時に求められるのです。防疫機能が必要なマスクには通気性を確保するとなると本末転倒な気がしますが、夏場の野外においては熱中症を予防する観点の方が大切でしょう。
病院や密になっている空間においてはしっかりとしたサージカルマスク着用など、感染リスクの高低による使い分けが求められます。
猛暑日においては接触冷感は機能しません
Q-max値とは熱の遷移量を表す数字ですが、実は測定条件によって数字は変化します。よく用いられるのは生地と肌の温度差が20度のときです。冷感生地の目安とされているQ−max値0.2もこの20度という温度差が基準になっています。つまり肌が37度に対して、生地温度が17度ということです。17度といえば5月の平均気温(東京)ですので、それより暑くなる日中や7月8月においては生地と肌の温度差が少なくなりますので条件的には不利になります。
そして気温(生地の温度)が体温を越えた時、逆に肌に熱が移る逆転現象が起こります。極端な例ですが、熱せられたアスファルトやコンクリートに触れたときに暑い!と感じるのはこのためです。夏場、空調の効いた部屋で冷感敷きパットにダイブするとヒンヤリとして大変気持ちの良いものですが、熱気がこもった冷感敷きパットにただただ不快を感じるのも同じ理由です。
猛暑日の野外においては、いくらQmax値が高いマスク生地でも接触冷感機能は意味をなさないのです。
そこで考案されたのが近江ちぢみ、小千谷ちぢみをはじめとする、表面に凹凸のある生地です。肌へのまとわりつきを減らし、サラッとした風合いを保ってくれます。これらの表面にシボ加工された生地はQ-max値においては理屈(生地が肌に当たる箇所が少ないため、熱移動する箇所が自体が少ない)としては低い数字にならざるを得ません。しかし接触冷感機能が役に立たないくらいの猛暑日においてはこの「ちぢみ」加工に勝るものはないのです。
接触冷感生地は肌が触れたときに熱の移動があることに意味がありました。気温(生地温度)が肌の温度を超える猛暑日においては意味をなさないどころか、素材によっては不快になるだけであることを覚えておいてください。
粗悪品をつかまされた挙句、肌荒れになってしまったとなっては目も当てられません。
廣田紬扱いのマスク生地は安心安全の日本製、全て天然繊維を使用、猛暑日においても優れた通気性で快適にお過ごしいただくことができます。Q−max値はわかりやすい指標ですが、生地の素材や織り方にも注目してみてください。