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問屋の仕事場から

2024.08.29
希少になってしまった飛び柄の大島紬

一昔前まではたくさんあった飛び柄の大島紬、廣田紬でも大量にオリジナル柄を作成していましたがここに来て産地レベルでも枯渇し始めています。

大島紬の飛び柄とは、柄が一定の間隔で飛んで(離れて)いる地空きの商品のことを言います。左右上下対称の繰り返し柄が続き、様々な文様、柄が使われてきました。

深く沈み込む泥染めの無地場から、ポツンと柄が浮き出ることで大島紬の絣の精緻さ美しさを浮き立たせます。全面絣模様も素晴らしい仕事ですが、飛び柄もこ負けず劣らず魅力的な柄です。

椿の飛び柄、廣田紬オリジナルの大島紬

お客様から飛び柄の大島紬のリクエストがあった際、社内在庫を調べると意外にも僅少であることがわかり、奄美に行った際に調達を試みました。しかし従来扱ってきた15.5算の商品は皆無、廉価品の13算ですら在庫がほとんどない状況でした。

飛び柄の商品は難物となるリスクが高く割に合わないというのが実情で、機屋さんも積極的に作ろうとしなくなり、それに対応できる織り子さんもいなくなってしまったとのこと。

制作難易度が高い飛び柄

13m近い反物(実際は1疋:2反で織るので25m以上)の最初から最後まで綺麗に絣合わせをするのは実に大変で技術が求められます。これが最初から最後まで絣合わせが必要な詰め柄だった場合、絣合わせの数をこなすこと自体は大変です。一つ一つ合わせていけば絣作りが狂っていない限りキレイに経緯絣が並ぶからです。

一方で飛び柄の場合は、無地場の打ち込みの密度が違うと次の柄に影響が出てきます。何個も繰り返していればだんだんとズレてきますし、絣合わせに無理なテンションがかかると綺麗な模様になりません。さらに無地場には横段が入ったり、縦方向に絣足の意図しない大きなスジが入ったりもします。これらは製造工程上仕方ないものですが、程度が大きいと難物扱いとなってしまいます。

他の織物では味で許される絣ズレも、絣が合っていて当たり前という厳しい大島紬の世界では通用しません。

数万という数が作られていた頃はまだリスクのある柄にチャレンジする余裕がありました。しかしマンパワーが限られた今、どうせ作るなら出来るだけリスクを避けて付加価値の高いものを作る構図になっています。

また一つ失われる大島紬の柄のバリエーション、魅力が削がれていくのは悲しいものです。大島紬の飛び柄を見かけた際は是非チェックしてみてください。

 

 

 

 

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