廣田紬の社屋では織物をインテリアにあしらった箇所が所々にあり…
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問屋の仕事場から
- 2021.09.04
- ポイント刺繍で楽しい紬生地
廣田紬では加工用の紬生地も扱っていますが、今回は刺繍を施した商品を紹介します。
去る9月の月初展では弊社展示会場にて村山刺繍さんも展示会を催されていました。高度な京繍の技術はもちろん、意匠設計から友禅染の染め加工まで内製化されていて、一貫した着物作りをされているメーカーです。職人さんを直接雇用という形で抱え、若手職人への技術継承にも力を入れてらっしゃいます。
帯は豪華な西陣織に代表されるように、織帯が格上のケースが多く、染帯や刺繍帯はどちらかというとカジュアル寄りになります。生地も繊細な縮緬だけではなく、ざっくりとした紬生地も選択肢に上がってきます。
そんな紬生地に繍を施した商品、廣田紬の生地もございます。今回は紬生地に刺繍を施した村山刺繍さんの商品を紹介してきます。
ますは冒頭の写真の九寸帯、シンプルな四角の刺繍が施されています。
太細が混じり合う紬糸、手織りの味が楽しめるざっくりとした生地です。地色が独特の茶色ですが、柿渋染の生地になります。
刺繍は白い糸だけかと思いきや、陰影を持たせるために別色の糸も使われています。
お次は鳥をモチーフにした商品、
絣でも鳥の表現はよくありますが、基本的に上下対象の形となり、この刺繍のような斜め形状を表現することはまず行われません。自由度の高い刺繍ならいかようにも表現することが可能で、絣にはない立体感を持たせることができます。
こちらは白生地に唐草、2色の色糸を使い、美しい輪郭に仕上がっています。
白生地は複数の絹糸を引き揃えて織り、ざっくりとした風合いを持たせたものですが、同等の太さの刺繍で生地にうまく調和させています。
普段は摺友禅や紅型などに使われることが多い紬の白生地、ざっくりとした風合いは刺繍を施した帯にもぴったりといえるでしょう。
最後は、
こちらは廣田紬で提供した生地ではありませんが、写真の一番右側に陳列されている商品、、、
遠目にみるとなにやら丸紋?のようなイメージです。
柄を拡大したものがこちら。
中心を見ると人形のように見えますし、その枠を辿ると鳥のような絵にも見える独特の柄です。
型染めの上に、緯糸方向に刺繍が施してあり、立体感を増しています。
この不思議な意匠、実は廣田紬の座敷にあった襖の唐紙をモチーフにしたものなのです。
唐紙はそれ自体美しい物なのですが、意匠を繍に転用すると2次元から3次元へ立体感が増します。室内でしか眺めることのできなかった美しい柄が、帯という形で外の世界に飛び出す、遊び心溢れる村山刺繍さんの心意気に脱帽です。
紬生地と刺繍のコラボ、今後も機会ありましたら商品紹介してまいりたいと思います。