結城紬は糸の状態から染める「先染め」で織られるのが基本です。…
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問屋の仕事場から
- 2020.03.08
- 廣田紬ならではの無地の誂え結城紬
最高級の紬織物である結城紬、無地であれば特別なコストを要することなくお好みの色で一反から別誂えすることが可能です。
大量生産される工業製品と異なり、工芸織物は少数ロットで別誂えすることができます。特にすべての工程が人の手仕事によって作られる結城紬は、無地などのシンプルなデザインであれば数量条件に縛られることなく一反から作ることができます。
例えば黒という色一つとっただけでも数十色存在しますが、織物になることで色の深み、光の反射具合などで全然違うものに見えます。これらはカラーチャートのような印刷色見本では決して表現することができず、実際に結城紬の見本生地から見定める必要があります。
廣田紬では過去に無地の結城紬を何千反と作成しており、膨大なパターンの色見本サンプル(ハギレ)があります。それを見ながら出来上がり具合をイメージしていただくことで、紙の色見本とは別次元の色再現性を持たせることが可能です。
RGBを細かく指定して、全く同じ色の再現をしてほしいという依頼は、全てが手仕事の織物である結城紬の製造工程上困難ですが、「この色以上派手にならないように」等の振れ幅を持って管理することはできます。
そして一口に無地といっても平織と撚糸が使われている縮織では光の反射具合も微妙に異なります。
今や年に数えるくらいしか作られなくなった結城縮、参考見本として生地がおいそれと出てくるものではありません。廣田紬には様々な色の縮織り生地見本があり、サンプルとして見比べてもらうことができます。
そして経糸と緯糸の色が異なるゴケ無地、経糸を一本ごとに色糸を違わせる刷毛目(ハケメ)、霜降り(シャンブレー)に見える杢無地など様々なタイプがあります。
織物シミュレーションソフトの進化に伴い、糸質、織り方までパラメータに反映させることができるようになりましたが、結城紬の複雑で豊かな表情は決して表すことはできません。
昔ながらのやり方で、過去の縞帳と見比べながら吟味する。これも結城紬を誂えるという一興、工程が全て手作りの結城紬にはデジタルシミュレーションは野暮なのです。
結城の無地があるのは一流店の証
ピーク時は年間で3万反の生産があった結城紬ですが、現在は1000反を割り込んでいます。その中でも地機の無地は50反程度となってしまいました。証紙が茶色の高機の無地は店頭でよく見かけますが、割高の地機の無地を見かけることは稀です。産地全体で月に4、5反しか織り上がってこないわけですから、希少さでいえば細かな絣柄以上の存在です。
廣田紬においても在庫を潤沢に持ち続けることはできず、指定された色を即座に用意することはできません。
ベージュやグレーなど定番とも言える色はまだしも、例えばこれからの春むけの色として、薄紅梅、若草色、藤色の無地がほしいと急に注文が入っても都合よく在庫はないわけです。さらに広巾の男物に至ってはそれ自体を探すことが困難でしょう。
結城の無地が店頭在庫として置いてある販売店は一流店の証です。非常に高額なのに加え、糸の確保から始めるとなると半年はかかる結城紬、昨今の市況の中ではオーナーの強い志がないとそうそう作ることはできません。
廣田紬は原則として地機でしか結城紬を作りません。値段が張る地機の無地をわざわざ別誂してくださる販売店様が存在するのは、廣田紬扱いの結城紬の品質を信頼していただき、最終消費者に自信を持って進めることができるからです。
今後も産地の減産は加速度的に減っていくことが予見されます。生産の原点とも言える糸作りがボトルネックとなり、着物に適さない糸や、出生が怪しい糸が混ざり込むなど、いよいよ品質維持が困難になってきました。糸の確保ができないとなると、付加価値の高い絣柄に優先的に回されてしまうでしょう。現に越後上布などがそうなっていますし、一番基本である無地が作れないという日が来るやもしれません。
廣田紬には過去に製作した様々な無地の見本ストックがありますので、是非ご覧いただき別誂の参考になさってください。納期は3〜6ヶ月と少々要しますが、最高級の地機の無地が仕上がってきた時の喜びは格別な物になることでしょう。
※例えばベージュ〜紫系統の色の平織、見本裂出ないと言葉ではなかなか表すことができません。実際に近似色をみて比較するだけで随分とイメージが異なるはずです。サンプルとして何枚か写真をUPしておきますので参考にしてください。