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問屋の仕事場から

2019.08.25
結城で作られる真面目な真綿諸紬

本場結城紬のふわりとした風合いは唯一無二の物ですが、その価格がネックとなり万人が気軽に買うことのできるものではありません。コストの大半を占める手紬糸、これを上質な手紡糸に代替することでコストダウンを実現した紬があります。

従来の結城紬はあまりにも高価なため、購入できる層が限られてしまいます。産地ではマーケットを広げるべく廉価品の開発に乗り出します。他産地からも様々な新技法を取り入れ、生産設備の自動化、効率化を図ります。明治の末期に登場した石毛紬(緯糸に綿を使った交織)をはじめ、本来の結城紬とはかけ離れた商品も氾濫することになりました。

石毛結城の証紙

本家と酷似している石毛結城紬の証紙、組合HPから抜粋。

廣田紬ではそれら廉価版結城紬を扱うことはありません。素性が全く異なる商品に、悠久の歴史を歩んできた結城紬の名前を冠して販売するのは無粋と考えているからです。工業的に量産された織物であれば他産地の商品で十分ですし、現に他産地で作られたものに結城のラベルが貼られて販売されていることもあります。結城ブランドを冠した謎の織物、商品説明に苦労するのではないでしょうか。

 

結城産地ならではの真綿諸紬

従来の結城紬を知る人からすると、工業的に量産された廉価版結城紬は全く別物ということがわかります。平滑な絹糸を経糸に使い、絣は型捺染、製織は力織機、人の手仕事の美が感じられる要素がすっぽりと抜け落ちているのです。

そんな中、経糸、緯糸に手紡糸を100%使用、人の手によって丁寧に製織した商品があります。

反物

本場結城紬(高機)との違いは糸が手引き真綿糸に置き換えられただけ。

結城紬のように織り始めにカシャゲがありますが、結城紬の文字は一切なく、「諸紬」とだけシンプルに記載されているだけの商品です。「諸」とは全部、全てという意味で、全ての糸が手引き真綿紬ということです。世の中には様々な紬がありますが、少しでも生地に節糸が入っていれば紬生地と呼称されています。

経糸に節があると、緯糸を通するときに抵抗となり、織進めるのが困難になります。緯糸にさえ紬糸を使えば十分にフワッとした風合いになりますから、伝統的手法で作られる真面目な紬生地(例えば久米島紬)でも経糸には平滑な絹糸を使うのが主流です。経糸に節糸を使うと織り子さんが嫌がりますし、仮に経糸につむぎ糸を使ったとしても5本に1本という具合です。

生産効率とコストを考えた結果、数ある伝統的工芸品の中でも100%つむぎ糸を使いなさいと義務付けられているのは本場結城紬だけなのです。

生地の表面

糸に撚りがかかっているので、従来品より毛羽立ちにくく耐久性の点では勝る。

しかし結城紬を作り続けてきた産地においては経糸にも節糸であることが当たり前、他産地とはちがって織り子さんが厭うことなく作業することができます。

こうして作られた諸紬、結城の名を冠した他の商品とは全く違う別物です。パッと見ると何の変哲もない紬にみえますが、その風合いはまさに紬のお手本、フワッとした極上の風合いが伝わってきます。本商品が糊抜きがされているせいか、場合によっては質の悪い糸で作られた本場結城紬に勝るのではないかと錯覚してしまいます。

そして諸紬の白生地もつくられています。

世の中には様々な紬の白生地がありますが、ほとんどが自動織機で織られたものです。一部に手織りで作られた殊勝な商品もありますが、ましてや100%手紡糸を使った白生地は特殊品中の特殊品扱いです。手織り紬の風合いにこだわりたいが、さすがに結城紬の白生地はオーバースペックという方に是非お勧めしたい商品です。

分かりやすい比較例として紬の白生地の表面を比較してみます。紬糸の混率が増えれば増えるほど味わいのある生地になる一方、価格はUPします。

紬地の例 白い布

絹紡糸の紬調織物(左)、緯糸の一部に紬糸を使用(中)、経緯糸の一部に紬糸を使用(左)

結城の諸紬の白生地、経緯に100%紬糸を使用した最高の味わいを持つ生地。

最高の紬を作り続けている結城産地でこそ作ることができる手織りの諸紬、ブランド紬、証紙にこだわらない玄人にとっては最高のコストパフォーマンスとなることでしょう。廣田紬ではレッテルにこだわることなく、地味でもきらりと光る手仕事の美を追いかけています。